Monday, February 1, 2021

ワクチン輸送、〝心構え〟は整えている=国交省・秡川自動車局長会見 - カーゴニュース

国土交通省の秡川直也自動車局長(写真)は1月27日、年明け初めてとなる専門紙記者会見を開いた。新型コロナウイルスワクチンの輸送について「厚労省からの要請があれば、輸送協力体制をしっかりと構築する」と表明。また、2024年3月末を時限とする標準的な運賃の告示制度に関し、一部で時限延長を望む声があることについて「当面はトラック運送事業者への浸透と荷主への理解・周知を図る。時限延長は、時期が近づいてから現実的・具体的に検討すべき」とした。秡川自動車局長の会見要旨は次の通り。

国交省も輸送協力体制構築を準備

コロナワクチンの円滑な供給体制については内閣官房の主導の下、厚労省が中心となって行う。厚労省によるワクチン輸送のスキームについては、製薬メーカーの下で常日頃から流通に携わっている卸会社が基本的に物流を担当するのが原則となっている。そのため、厚労省からは、国交省やトラック業界に対し、最初から輸送を依頼する話は来ていない。医薬品の取り扱いに習熟している流通関係者で対応できるならば、それに越したことはない。

一方で、国交省が所管する貨物運送業界には保冷輸送での豊富なノウハウを有する企業がある。厚労省所管の医薬品流通の関係者だけでは十分に対応できない場合が生じたら、しっかりと輸送協力体制を構築できるよう国交省も準備しておく。内閣官房にもそのように伝えてある。

今のところ、厚労省からワクチン輸送についての具体的な要請はないが、2月後半からワクチン接種が始まるため、それに合わせ、しかるべきタイミングで輸送オペレーションを実施することが想定される。その際の協力に向けた〝心構え〟はしっかりと整えている。

ワクチン自体の輸送に限らず、全国のワクチン接種会場に設置するワクチン用超低温保管用ディープフリーザー(超低温冷蔵庫)や、輸送・保管の場面で利用するドライアイスの輸送なども今後は重要だ。こうした品目の輸送も、厚労省から要請があれば、ただちに対応できるよう全日本トラック協会と協議している。

トラック廃業1・7万件超、昨年より18%増

国交省では所管する業界へのコロナの影響について調査を実施している。コロナ禍が本格化した20年2月から12月までの期間で、トラック、貸切バス、タクシーそれぞれの休廃業届出件数を調べたところ、トラックは1万7254件で前年同期と比べ2686件(約18%)増加した。休廃業の理由にコロナの影響を挙げた事業者は226件で休廃業件数全体の約1・3%に相当する。貸切バスでは4割強、タクシーでは3割強がコロナ禍が原因となっている一方、トラックは相対的に少なくなっているが、これはコロナ禍の直接的な影響が、旅客運送よりも少ないためと思われる。なお、トラックの休廃業件数には、軽貨物運送業も含まれている。

国としても各種支援策の活用を呼びかけている。政府系融資による資金繰り支援については融資条件が緩和されており利用しやすくなっている。雇用調整助成金制度も延長が決まっており、ぜひともこれらの支援制度を利用していただきたい。また、国交省の21年度予算による運送業界への支援事業も着実に実施する。

標準運賃、当面は浸透・周知・理解を促進

改正貨物自動車運送事業法の柱のひとつである標準的な運賃は、告示の時期がコロナ禍の最中となり、予定通りの周知が進んでいないと認識している。全ト協とも連携し、しっかりと周知を図っていく。事業者に対して自社の経営を見直すためにも標準的な運賃を活用してほしい。自社の運賃設定と標準的な運賃とを比較・分析し、安定的な事業継続を可能とする経営に役立ててほしい。

標準的な運賃は、24年3月末までの時限措置だが、コロナ禍などを理由に時限延長を望む声もあると承知している。ただ、時限延長については、その時期が近づいてから現実的・具体的に検討すべきだ。当面は標準的な運賃の事業者への浸透と、荷主に対する周知と理解の促進に努めていく。

大雪での立ち往生、トラックは〝悪くない〟

昨年末から1月にかけて日本海側を中心に大雪降雪が相次いだ。それにより北陸自動車道などで深刻な道路渋滞が発生した。その原因としてスタッドレスタイヤの未装着トラックの立ち往生が原因だと想定され、そうした報道もあったが、詳細に調査を行ったところ、「道路管理者の指示により道路脇で停車している」トラックが「立ち往生している」と誤解されたケースもあった。また、スタッドレスタイヤを履いていないとされた車両が実際には装着しているなど現場からの情報にも錯綜が生じていた。「トラックが悪い」とする報道も一部ではあったが、実際の状況を正確に反映していない面もあった。当局としても正確な情報に基づき、現場での対応を進めていく。

荷主には法令により安全運行の配慮義務があるが、今回の事例では、荷主が豪雪にも関わらず運行を強要したという通報はない。今後の対応として、降雪時のスタッドレスタイヤ装着では従来の規定を遵守することに加え、タイヤ摩耗度についても法令で基準を設けることとした。スタッドレス装着に加え、チェーンの携行も呼びかけていく。
(2021年2月2日号)

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February 02, 2021 at 07:00AM
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