Thursday, August 24, 2023

有事の海上輸送能力 輸送艦おおすみ型3隻では全然足りない - 日経ビジネスオンライン

輸送艦おおすみ。東日本大震災のとき、物資輸送に貢献した(写真:ロイター)

輸送艦おおすみ。東日本大震災のとき、物資輸送に貢献した(写真:ロイター)

陸上自衛隊が反転攻勢に使う重装備をいかに輸送するか。期待は海上輸送にかかるが、ここでも輸送能力が足りない。安全保障とインフラの関係に詳しい樋口恒晴氏は輸送船の拡充や重装備の備蓄を提案する。日本全国に岸壁水深12メートル以上の港は約90ある。ここに寄港できる大型輸送船の建造が欠かせない。樋口恒晴・常磐大学元教授に聞いた。

(聞き手:森 永輔)

(前回はこちら「有事を想定していない日本の鉄道 領土奪還作戦の役に立たない 」)

船で運ぶなら、海上自衛隊が保有する「おおすみ」型輸送艦を利用することが考えられます。おおすみ型は、おおすみ、しもきた、くにさきの3隻があります。

樋口恒晴・常磐大学元教授(以下、樋口氏):そうなのですが……。ここでもキャパシティーの問題に直面します。おおすみで輸送できるのは陸自の軽装備部隊で1個大隊、重装備部隊で1個混成中隊くらいだからです。そして3隻しかありません。

<b>樋口恒晴(ひぐち・つねはる)</b><br> 常磐大学元教授。専門は防衛政策。1964年生まれ。筑波大学博士課程社会科学研究科単位取得退学。常磐大学国際学部専任講師、助教授、准教授、教授、総合政策学部教授を歴任し、2023年3月に退任。著書に『日本の死角』『「平和」という病~一国平和主義・集団的自衛権・憲法解釈の嘘を暴く~』『幻の防衛道路-官僚支配の「防衛政策」』など。(写真:菊池くらげ、以下同)

樋口恒晴(ひぐち・つねはる)
常磐大学元教授。専門は防衛政策。1964年生まれ。筑波大学博士課程社会科学研究科単位取得退学。常磐大学国際学部専任講師、助教授、准教授、教授、総合政策学部教授を歴任し、2023年3月に退任。著書に『日本の死角』『「平和」という病~一国平和主義・集団的自衛権・憲法解釈の嘘を暴く~』『幻の防衛道路-官僚支配の「防衛政策」』など。(写真:菊池くらげ、以下同)

民間海運会社との協力体制を築け

海自の輸送能力が足りない以上、有事のときには民間の海運会社に協力を要請することになります。その仕組みはできているのでしょうか。

樋口氏:できていません。これを可能にする法制度を早急に整える必要があります。

 ちなみに米国は有事の航空輸送において、政府・軍と民間航空会社が協力するための制度を整えています。有事となれば、航空保全管制及び航法援助統制(SCATANA:Security Control of Air Traffic and Air Navigation Aids)を発動して北米大陸における航空管制をコントロールすることができます。さらに、民間航空機を強制的にチャーターする、もしくはウエットリースできるようにする民間予備航空隊(CRAF:Civil Reserve Air Fleet)制度も整えている。米国の主要な航空会社はすべてこの制度に加入しています。米軍の業務に従事する乗員は軍属として扱われ、軍人に準じた守秘義務を課されます。ウエットリースは機材だけでなく乗員も一緒にリースする仕組みです。

 日本は、このCRAFの海運会社版を整えるのが理想ですが現実的ではないのです。

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August 25, 2023 at 03:00AM
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