トラック運転手の働く環境改善へ時間外労働の上限規制が設けられる「2024年問題」。県内外の運輸・物流企業が対策として、国内物流の大動脈の関東-関西間の中間に位置する本県に拠点を置いた「中継輸送」に取り組んでいる。従来、1人のドライバーが泊まりがけで運ぶ長距離輸送の行程を、仲間で分担することで日帰り可能な勤務にして負荷を低減させる狙いだ。
8月中旬の深夜、浜松市北区の新東名浜松SA(サービスエリア)下り線の隣接地。中日本高速道路と遠州トラック(袋井市)が共同運営する中継輸送拠点「コネクトエリア浜松」に、上下線のスマートICを降りた大型トラックやトレーラーが続々と乗り入れた。
事業開始から5年となる同拠点(面積約8千平方メートル)は32台分の駐車バースを備える。関東や関西方面を発地に走行してきた予約済みの車両がペアで落ち合い、ドライバー交代やトラクター(けん引車)部分の交換作業などを終え、来た方向に戻る。22年度の延べ利用台数は前年度比33%増の約1万台で、直近7月の1カ月の累計利用台数は前年同月比12%増の1032台と増加傾向にある。
大阪・茨木市のドライバー歴15年の男性(59)は「中継輸送を担当して体の負担が減った」と表情を緩めた。利用企業の中には中継輸送を前提に採用している企業もあるという。遠州トラックの榑松弘充営業企画課長は「潜在的なニーズは高い。利活用を促していきたい」と声に力を込める。
県外の企業も本県の立地や施設を最大限に生かす。
大手食品5社が共同出資する物流会社「F-LINE」(東京)は関東と中部地域の配送で6月から、上下集約型の新東名清水PA(パーキングエリア、静岡市清水区)を拠点に中継輸送を始めた。従来茨城県の工場から愛知県に輸送していたカゴメと、愛知の倉庫から関東エリアに向かう日清製粉ウェルナの輸送で、逆方向から来た両トラックの運転手が中間の清水PAで交代する。鴻池運輸(大阪市)は14年、同社中継輸送の第1事例として島田市にスイッチセンターを設けた。休憩も可能な自社拠点を有効に活用する。
15年以上前から中継輸送を導入する鈴与(静岡市清水区)は、具体的効果の一つに、離職率が全国平均の半分以下の5%と運転手の定着率向上を挙げる。近年は荷主企業だけでなく、同業の運送会社と連携した中継輸送ネットワーク拡大にも取り組んでいて、担当者は「人手不足が社会課題となる中、輸送、荷主企業や利用者、社会が歩み寄り、物流効率化に向けて理解や協力をしていくことが必要になる」と指摘する。
(浜松総局・山本雅子)
中小への浸透 課題
一つの輸送工程を複数のドライバーで分担する中継輸送は、自社拠点やドライバー数に余裕がある大規模企業が先行する一方、トラック事業者の大半を占める中小企業にはハードルが高い。働き方改革を後押しする国土交通省も課題として捉え、「物流量やニーズが高い地域を見極め、中小事業者を含めて中継輸送が実施可能な環境整備を検討する」としている。
国交省の資料などによると、労働時間規制などへの具体策を講じなければ、30年度には輸送能力が約34%不足する可能性があるなど物流の停滞が懸念される。
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September 10, 2023 at 04:41AM
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トラック「中継輸送」静岡県内加速 日帰り勤務可能、運転者の負担減【迫る24年問題】|あなたの静岡新聞 - あなたの静岡新聞
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