名古屋大学は2024年7月9日、同大学大学院工学研究科の研究グループが、電力を使用せずに10kW以上の熱を輸送できるループヒートパイプ技術を開発したと発表した。
近年、これまで活用されていなかった工場排熱や太陽熱などの熱エネルギーを有効活用する技術が注目を集めている。同技術を実用化するにあたっては、排熱源から離れた利用先まで熱を損失なく運ぶ技術が必要となる。
既存の機械式ポンプは電力を必要とし、顕熱輸送で効率が悪く、機械的な機構の寿命も短いといった点が課題となっていた。このため、無電力で半永久的に、高効率で熱を輸送する技術が望まれていた。
同研究グループが今回開発したループヒートパイプは、電力不要の熱輸送デバイスだ。ウィックと呼ばれる多孔質体が液を吸収する「毛管現象」を、ポンプの動力に用いる仕組みとなっている。
ループヒートパイプの性能向上にあたっては、ウィックで運んだ液体を高効率で蒸気に変える蒸発器内の構造が重要となる。
従来の蒸発器のグルーブ(蒸発器で生成した蒸気を蒸発器外に排出するための溝)は1方向で構成されていたが、今回開発した蒸発器は、3D微細グルーブ構造を蒸発器ケース内側四面に採用。グルーブのサイズは、1×2×2mm(幅×高さ×ピッチ)となっている。
これにより、ウィックとグルーブでの冷却性能(蒸発効率)が向上。4.5kWの熱輸送時で、蒸発熱伝達率92000W/(m2K)を達成している。
ウィックは、ステンレス製のブロック型を採用。サイズは143×145×22mmとなっている。ウィックの高さやウィックコアの数および径は、ウィック部の有効厚さをパラメーターとし、ループヒートパイプの性能に関係する熱リークおよび流動圧損が最小になるように設計した。
この結果、最大10kWまでの熱輸送が可能なことを確認した。また、熱源面積換算した熱流束(伝熱面の冷却性能を表す指標)は、最大で30W/cm2に達している。
今回開発した技術は、データセンターや電気自動車(EV)、月面探査機などでの熱マネジメントの省エネ化に寄与する。また、工場排熱や住宅における太陽熱利用などを通じて、カーボンニュートラルの実現にも寄与するという。
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July 10, 2024 at 08:00AM
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