新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由とした政府の一斉休校要請は28日、県内の教育現場に大きな混乱をもたらした。各校は対応の確認や説明に追われ、保護者からは疑問や不満の声が相次ぐ。自宅で過ごすことが求められる子どもたちも困惑し、出口の見えない異例の対応が不安に拍車を掛けている。
「来週から休校にします」。相模原市中央区の市立富士見小学校では5時間目の冒頭、二宮昭夫校長が全校放送を行った。
「えー。うそ」「もうみんなに会えなくなっちゃうの」。3年1組では、顔を見合わせて驚く児童に、担任の相原香代教諭が諭すように話した。「みんなの体を守るためだから、自宅で過ごしてね」
「1年間の思い出を書いて」と画用紙を配ると、笑顔もあった児童たちは寂しげな表情を見せた。「今日で終わりではないよ。また会えるよ」と相原教諭。画用紙を黒板に張り出し、道具箱など重い荷物を背負って帰宅する児童を送り出すと、「1年間一緒に過ごしたクラスがこういう形で終わるのは寂しい」と涙ぐんだ。
家路に就く児童を昇降口で見守った二宮校長はため息をついた。「怒濤(どとう)の一日です」。卒業式をどのように開くか。成績表をいつ渡すのか。「まだ決まっていないことばかり」と不安を示しつつ、「休校は残念だが、感染拡大を防ぐためにはやむを得ない」と受け止めた。
県内の各校はこの日、教育委員会との連絡や児童・生徒と保護者への説明対応などに忙殺された。
小田原市立中の校長は「現場は混乱している」と明かす。「夏休みでも部活で生徒と会えたが、今回は部活も禁止。家庭にお任せになってしまう」と苦慮し、「連携して見守れればとは思うが、どこまでできるか」と経験のない事態に頭を悩ませる。川崎市立中の校長も「検討しなくてはいけないことばかり。カリキュラムに影響が出てしまう」と懸念を口にした。
悩んだ揚げ句、3月2日からの休校を決めた横須賀学院中学・高校の川名稔校長は「先行きが見えない不安定な状況で、何が正しいのか分からない。苦渋の決断」と心境を明かす。
生徒や保護者らの不安はさらに大きい。
「公表が急すぎる。学校が休みになっても、遊びに出てしまう人がいるのではないか」と横須賀学院高1年の大貫和志さん(16)。中3の長男(15)が卒業式を控えている川崎市内の男性(48)は「子どもは時間を持て余してしまう。名残惜しくて友達と遊ぶのを止めるのは心苦しい」と打ち明け、疑問を投げ掛ける。「通常通りの授業が本当に危険なのか。根拠があいまいだし、一種の政治的なアピールにしか見えない」
この男性は「自分は自営業なので自宅にいることはできる」というが、休暇の取得やテレワークが困難な人は少なくない。
県内企業の女性社員(40)は「小3の長女を1人で留守番させたくないが、実家の両親は介護中で頼れない」と途方に暮れる。都内から横浜市内に勤める女性(38)は小1の長女(7)と県内の実家へ身を寄せることにした。「娘が友達と離れてしまうのがふびん。習い事にも通えなくなる」と声を落とす。
県内の建設会社の社長は本音を漏らす。「在宅ではできない仕事が多く、共働きの社員もいる。働ける人で埋め合わせしていくしかないが、先が見えない」
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February 29, 2020 at 03:00AM
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「先見えぬ」休校ショックで現場混乱 出口見えず募る不安 | 社会 - カナロコ(神奈川新聞)
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