「犠牲者を出さないという覚悟で取り組んでいただけに、残念でならない」。１８日に富山市が開いた会見で、酒井敏行福祉保健部長は、県内初の感染者の死者が出たことについて、苦渋の表情で市長のコメントを読み上げた。死亡した９０代女性の感染経路は分かっておらず、拡大防止に「先が見えない」「手だてがない」と危機感をあらわにした。
９０代女性が入所していた老人保健施設「富山リハビリテーションホーム」（富山市丸の内）では、女性を含めて３人の感染が確認されているが、ウイルスの侵入経路は分かっていない。１７日に２０代の女性職員の陽性が判明した障害者入所施設「セーナー苑」（同市坂本・大沢野）への感染経路も不明のままだ。
１８日に市保健所で会見した酒井部長は「この２例はクラスター（感染者集団）につながりかねない」と危機感を示した。市中感染が広がっている可能性があるとして「今後、別の施設でクラスターが起きる恐れもある」との認識を示した。
基礎疾患のある高齢者が多く生活する老人保健施設は、感染した際の危険性が高いとされる。兵庫県内の同様の施設では、３月に陽性となった利用者の死亡が相次いだ。そのため、市内の各施設は厳重な対策を取っており、酒井部長は「予防への意識が高い施設で感染が起きたことはショックだ」と話した。
経路不明の感染が続くことを受け、酒井部長は「感染のレベルが上がっている」と説明。終息が見えない現状を「マラソンなら４２キロ先にゴールがあるが、ゴールが見渡せない」と例えるとともに、「できるだけ外に出ず、人との接触を避けるしか拡大を止める手だてがない」と市民に呼び掛けた。
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