Friday, July 2, 2021

「ザ・ホテル」の伝統受け継ぎ130年、生まれ変わる帝国ホテル…定保英弥社長インタビュー - 読売新聞

 重厚感のある吹き抜けのロビーに足を踏み入れると、笑顔のスタッフに迎えられた。東京・内幸町の帝国ホテル。131年の歴史を刻み、一流のサービスを尽くすホテルは、訪れた多くの人々の気持ちを満たしてきた。その本館とタワー館が建て替えられるという。五輪開催もいよいよ近づいてきた今、定保英弥社長に、コロナ後の世界を見据えて思い描く、これからの帝国ホテルの姿を聞いた。

 「私たちはホテル業をなりわいとしてやってきました。これからも軸足はホテル業であることに変わりない。最近は高い建物ができて、その上層階がホテルというところが多いが、本館はそうではなく、『ザ・ホテル』にこだわりたい」。1970年に完成した本館の応接室で、定保社長が語り始めた。

 現在の本館は3代目となる。初代は1890年(明治23年)にさかのぼる。明治政府が外国の要人をもてなす迎賓館として、国の威信をかけて建設したドイツ風ルネサンス様式の建物だった。その建設にかかわり、初代会長も務めたのは、日本経済の礎をつくった渋沢栄一である。2代目は、建築家フランク・ロイド・ライトの設計により1923年に完成した。「ライト館」と呼ばれ、国内外で今も語り継がれる名建築だった。取り壊しの際は保存運動が起きた。

 「今の本館が建てられたのは、東京五輪(1964年)を終えて大阪万博(70年)が開催され、ボーイング747が就航した時代。大量輸送時代の幕開けです。ホテルの部屋数も一気に増やしていこうという機運の中で、残念ながらライト館を閉めて、できたものです。それが昨年で50年たった」

 しっかりメンテナンスをしていけばまだ数十年は使えるという。だが施設の古さは否めない。特に客室の広さは、東京に進出した外資系ホテルが平均50~60平方メートルあるのに対し、帝国ホテルは30~40平方メートル。「最も優れたサービスと商品を提供するには、施設を新しくし、世界のスタンダードに追いつき、追い越さないといけない。広い部屋と最新の技術、次世代のホテルマンが活躍できる舞台を整え、お客様にホテルライフを楽しんでいただけるサービスを考えていきたい」。ライト館の絵画をバックに定保社長が力説する。


 24年にスタートする建て替えは、まず築40年近い31階建てのタワー館「帝国ホテルタワー」から始め、約5年かけて完成させる。商業施設、オフィステナント、その上にサービスアパートメントという構成になる。その後、本館の工事を区画ごとに進め、その間もホテル営業は規模を縮小して続ける。最終的に新しい本館がオープンするのは36年を予定する。2000億~2500億円を投じる15年がかりの大プロジェクトだ。

 コロナ禍で帝国ホテルも大打撃を受ける中、大きな決断ができたのは、堅実経営で蓄えてきた財務的な体力があること、タワー館の安定した不動産賃貸収入を今後も確保できる見通しがついたことが大きい。これによって、顧客へのサービスを継続し、従業員の雇用を守れる。

 では、本館はどんな建物になるのだろうか。「詳細は今まさに最終段階」に入っているが、「初代本館、2代目ライト館の雰囲気を受け継ぎ、重厚感のある『ザ・ホテル』と呼ぶにふさわしい建物にしたいと考えています」。客室は広くなり、部屋数は少なくなる。そして40年に開業150周年を迎えることになる。

 着工の24年はちょうど初代会長渋沢の肖像画の入った新1万円札が発行される年でもある。「渋沢栄一翁が助けてくれるだろうと、淡い期待もしています」

 「昨年、1回目の緊急事態宣言が発令されたときに従業員全員にメールを送ったんです。大変なことになったが頑張って乗り越えていこうと。2600人くらいに送りました。そのとき、感染対策などのアイデアも募ったら、5473件もの提案がありました」

 帝国ホテルが現在行っている感染対策は、すべて従業員からのアイデアだという。例えば、バイキング料理。料理をつかむトングが感染対策上、適切ではないと言われた。そこで、テーブル席に座ったままタブレット型端末で料理を注文すれば係が皿に盛りつけて持ってくる方式を導入した。

 そして、定保社長はこう続けた。「わたし以上にみんな考えてくれているんだと感動しました。ホテルにとって、ひとは財産。時間がかかっても何とか乗り越えていけると確信しました」

 帝国ホテルで働くものには「九つの実行テーマ」がある。「あいさつ、清潔、みだしなみ、感謝、気配り、謙虚、知識、創意、挑戦」。これらの言葉をホテルのスタッフたちが日頃から心がけていることは、2011年3月11日の東日本大震災のときにも表れた。

 日比谷公園にあふれていた2000人の帰宅困難者をロビーに迎え入れたのだ。寒い夜だった。従業員たちは客室から毛布を持ってきて配り、非常食の水や乾パンを提供した。コックたちは温かい野菜スープをつくった。それらは上からの指示ではない。一人ひとりの従業員が自ら考え、行動した結果だった。

 五輪が迫ってきた。従業員へのワクチン接種を職域接種で進めており、さまざまな感染対策も万全を期している。その上で、原点に立ち返ってサービスを尽くしていくつもりだ。

 その原点とは、渋沢が従業員に述べた言葉にある。定保社長はそれをそらんじた。「いろいろの風俗習慣の、いろいろの国のお客を送迎することは大変にご苦労なことである。しかしながら君たちが丁寧によく尽くしてくれれば、世界中から集まり、世界の隅々に帰って行く人たちに日本を忘れずに帰らせ、一生日本を懐かしく思い出させることのできる、国家のためにも非常に大切な仕事である。精進してやって下さいよ」

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July 02, 2021 at 02:00PM
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