Friday, October 29, 2021

8億円のホテルをネットで「今すぐ購入」! 「NOT A HOTEL」の新規性に迫る - ITmedia

 「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、2020年4月に創業した「NOT A HOTEL」。「ホテルではない」という意味の社名は、同社のビジネスモデルを表す。自社で保有するホテルの部屋を顧客に“貸す”のではなく、自社で建築するホテルを顧客に“直接売る”D2Cモデルだ。

栃木県那須の16万坪の高原に漂う「NOT A HOTEL NASU」。1棟買いの価格は、8億3760万

 数億円のホテルを1棟買い、あるいは年間30日単位のシェア買いで提供し、いずれもオンラインのみでの販売となる。ホテルを購入したオーナーは不動産としての資産を保有しながら、自分が暮らす場所として使用可能。自身が使用しない期間はホテルとして貸し出し、1日単位で収入を得ることもできる。

 手掛けるのは、実業家として07年からEコマースプラットフォームを長く展開してきた濱渦伸次(はまうず・しんじ)氏。億単位の商品をオンラインでD2C販売するという、ぶっ飛んだビジネスモデルだが、想像以上に多くの購入希望者がいるとか。「NOT A HOTEL」の新規性、現在までの反響を濱渦社長に聞いた。

D2Cでホテルを1棟、または「年間30日単位」で販売

 数千万円から数億円のホテルをオンラインで「今すぐ購入」できる。そんなユニークなビジネスモデルで注目を集めているNOT A HOTEL。メンテナンスを除く年間360日間が使える「1棟買い」と、年間30日使える「シェア買い」の2パターンがあり、シェア買いの場合は30日単位で複数口の購入も可能だ。

 オーナーになると、購入した日数分を「家」として暮らす、あるいは「ホテル」として貸し出すことが選択できる。使用しなかった日数分は自動的に貸し出し扱いとなり、1日単位で固定収入が発生。宿泊者がいてもいなくても、必ず収入が発生するそうだ。

 オーナーは月々の管理費のほか、固定資産税と保険料の支払いが必要となるが、物件を半分ホテルとして貸し出せば、月々支払う管理費と未使用時の収入がほぼ同額になる。半分を自身で楽しみ、半分を貸し出せば、ランニングコストがかからない設計だ。

宮崎空港から15分、歩いて10秒で海にたどりつく宮崎県青島の「NOT A HOTEL AOSHIMA」

 集客する際にブッキング・ドットコムのような他社サイト(OTA)を経由しないこと、オーナーの利回りを2〜4%と低く設定していることから、宿泊者がいなくても収入が発生する仕組みを実現できるという。「そもそもオーナーがシェア買いするケースがメインであり、空室が多く出ないだろうと見積もっている」と濱渦氏。

 オーナーは、自身が購入した物件以外に、NOT A HOTELが運営するすべての施設を相互利用できる仕組みも。現状の物件は、宮崎県青島にある「NOT A HOTEL AOSHIMA」の2物件と栃木県那須の「NOT A HOTEL NASU」の6物件(合計8物件)だが、25年をメドに30カ所の建設を目指す。

 サイト上で購入を申し込むと、1口(30日)当たり1万5000円の前払いが発生し、その後、審査や抽選の結果、初回入金分(販売価格の35%)を支払い、売買契約書を締結する流れだ。サイト上に掲載されているホテルはCGのイメージ画像で、購入手続きが完了した後に、正式に建設がスタートするという。

魅力的だが土地代が安い「穴場」のリゾート

那須には源泉かけ流しの温泉も完備。大草原を見渡せる

 宮崎県青島や栃木県那須といった場所にリゾート施設を建設した狙いについて、濱渦氏は「魅力的ながら人気が集中していないエリアを選んだ」と語る。

 「青島や那須は、那覇や軽井沢など定番の観光地に近い場所でありながら、土地代が安く抑えられるのが魅力でした。那須は東京から新幹線でわずか1時間、宮崎は東京から2時間かからず、沖縄よりも早く着く。土地代を抑えたぶん、建築に予算を使えるため、プールやサウナ、源泉かけ流しの温泉、露天風呂などの施設を備えたリゾートを現在の価格で提供できています」

 もし、現在の建築を軽井沢でつくったら、2倍ほどの予算がかかるとか。近年の観光スタイルとして、周辺観光よりも施設内で過ごす時間が増えている傾向を踏まえ、施設内で長時間快適に過ごせることを重視しているそうだ。

 ターゲットとするのは、30〜50代の比較的若い経営者層。実際、NOT A HOTELがこの世代から反響がいい理由について、3つのポイントがささっているのではないかと濱渦氏は分析する。

 「建築デザイン、ロケーション、テクノロジーを駆使したスマートハウスの3つが、彼らにウケているような気がします。NOT A HOTELは、バブリーでラグジュアリーなデザインではなく、アート作品のようなテイストを採用しています。

 また、専用アプリ内で鍵の開け閉めや温度、湿度、明かりの調整、宿泊・収入の管理までスムーズに行える。立地的にも利便性が高い。リスクを抑えながら良いものをシェアで安く買うというのも、この世代らしいかなと思います」

部屋内の調整から収益管理まで、専用アプリ内ですべて行える

住めるホテルは「資産」にもなる。オーナーのメリット

 オーナーになるメリットを尋ねると、「投資商品としては魅力的ではないが、レジャーの支出と考えれば利点がある」とのこと。

 「既出のとおり、数千万円〜数億円を投資しても利回りは2〜4%と低く、投資商品としてはおすすめしません。ただ、所有する施設を暮らしの場所としてとらえると、メリットを感じてもらえるのではないかと。

 例えば、30日利用で3580万円の『SURF』という部屋は、室内外の面積が300平方メートルを超える広さと設備があり、超スイートの部屋と同等になります。仮に、1日の宿泊代金を20万円と換算して年間に30泊した場合、6年以上使うと購入金額の3580万円を超えます」

2007年にアラタナを創業、15年にZOZOに売却しグループに参画(20年に退任)。Eコマース業界で豊富な経験と人脈を持つ濱渦氏

 レジャーの支出として長い目で見ると、経済的なメリットが教授できるというのが濱渦氏の考えだ。さらに、同施設は通常の不動産のように売買することも可能だという。そのため、もし購入時の金額で売れたとすれば、それまで楽しんだ施設の利用代金が実質無料になるというワケだ。

 「自分で利用しながら楽しめる第三の資産として、新たな選択肢を提供したい」と濱渦氏は言う。さらに、「物件管理の手間がない点」も付け加えた。

 「自宅の部屋を貸すというと、エアビーアンドビーを連想される方もいると思いますが、エアビーの場合は貸す側と泊まる側の両方の利便性が考えられています。一方、僕らの場合は『オーナー向け』に振っている。オーナーは、空室の集客や管理、清掃など一切の手間がありません。オーナーが行うのは、利用しなかった日に発生した収益のチェックのみです」

 シェア買いの場合、最大12人のオーナーが存在し、360日の利用期間を複数人で振り分けることになる。各オーナーの公平性を保つため、GWや年末年始といった休暇期間に集中して予約できないような仕組みを設けているとのこと。

 那須は最大10人、青島は最大8人が宿泊可能で、家族や友人同士の滞在のほか、企業合宿や社員旅行などでも利用が見込まれそうだ。

「現地を見てから購入したい」人はいない

 那須、青島の8物件は9月28日に発売したばかりだが、すでに多くの購入希望者がいるそうだ。11月に契約手続きが行われるため、正式な購入者数の発表はそれからになるとのことだが、ほとんどが法人ではなく個人で、なかには1棟買いを希望する申込者もいたという。

 「売れると思って販売しているものの、実際に数億円の施設に購入申込があったときはビックリしましたね。ただ、シェア買いの購入希望者が多いため、その需要に応えるために現在は1棟買いを中止としました。すべて1棟買いで売れたら、販売するものがなくなってしまうので(笑)。

 さらに驚いたのは、いくつかあるホテルのタイプのうち、高い金額のものほど購入希望者が多いこと、現地を見てから購入したいという方がいなかったこと。今回、現地での説明会などは実施していないのですが、みなさん『グーグルマップで見たから大丈夫です』と。現地を見ることなく、オンラインで数千万円から数億円の不動産が売れるんだと分かりました」

目の前に南国の海が広がる青島の施設

 想像以上に需要が多く、「このエリアに施設を作ってほしい」という問いわ合わせも少なくないそうだ。幸先の良いスタートを切ったように見えるNOT A HOTELだが、今後の課題はどこにあるのか。

 「販売中の那須と青島のような穴場の良い土地を探すことが一番の課題であり、楽しみでもあります。東京から1〜2時間以内の関東近郊や海辺などリクエストが多い場所を筆頭に、日本各地の宝物のような土地を、自分たちの足で探していく必要があります」

届けたいのは「世界中に家が増える」感覚

 今回、青島のNOT A HOTEL AOSHIMAは、新たな取り組みとして、信託受益権販売による不動産の証券化という方法を採用した。同施設は、宮崎市青島財産区が保有する国定公園内に立地しており、同社は宮崎市から35年間の定期借地権により土地を借用。そして、30年間使えるホテルの長期使用権を信託化して証券として販売している。

 「今年冬には福岡の施設が発売となり、その後も建築をどんどん進めていきます。同時に、不動産を証券化して、これを小口のセキュリティトークン(トークンという形でデジタル化された証券)として販売する手法も確立したい。そのためには法整備が必要で、時間はかかりますが、いずれは現物ではなく物件そのものをデジタル化して、オンラインで販売できればいいですね」

 同社が目指すのは、自分の家が増えていくような感覚をオーナーに提供すること。毎年新しい物件が増え、「明日はどこに住もうか?」とワクワクするような。国内だけでなく、いずれは海外にも施設を建設したいという展望があるそうだ。デジタル化された不動産がオンラインで購入でき、国内外に家が持てる。同社の登場により、不動産のあり方が変化していくかもしれない。

写真提供:NOT A HOTEL

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October 30, 2021 at 06:00AM
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