Wednesday, September 7, 2022

地方空港、地元特産を世界へ新鮮輸送 苦境の旅客便活用 ヤマトなど実証実験 - 産経ニュース

台湾に向けて航空機に積み込まれる日本の農林水産物=8月25日、那覇空港(ヤマト運輸提供)

新型コロナウイルス禍で国際便が運休・減便し、苦境が続く地方空港を農林水産物の輸出で活用しようとする実証が相次いでいる。国際航空便は成田空港への一極集中が進んでおり、アジアで高価格で取引される地方の農林水産物も、首都圏を経由して空輸されることで、輸送コストの上昇を招いている。苦境が続く旅客便を逆手にとって、地方同士をつなぐ新しい流通網としても期待が高まっている。

8月25日午後8時前、中華航空(チャイナエアライン)のチャーター機が那覇空港を飛び立った。行き先は台湾の台北桃園国際空港だ。

ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸が実施した実証実験で、沖縄県産の農産物のほか、石川県産の野菜や果物、海産物を輸出した。石川県産品は当日の午前中に収穫されたもので、通関・検疫を済ませ、小松空港から空輸している。

沖縄県などは那覇空港の国際物流拠点化を進めてきたが、コロナ禍で国際線は令和2年3月から全便運休となった。4年8月に一時再開したが、わずか2週間で再び休止となった。

地方空港から海外への直行便がなくなったことで、地方からの輸出は成田や羽田空港などの主要空港を経由しなければならない。中でも、成田は国際航空貨物の取扱量シェアがコロナ前の5割強から6割強に増加、一極集中が加速している。

台湾に輸出された沖縄県産のゴーヤー(ヤマト運輸提供)

那覇から台北への直行便の飛行時間は約1時間半だが、東京経由では荷物の積み替えなどで8時間以上かかる。新鮮さが売りの農作物では商品価値に大きくかかわる。ヤマトは「自社で構築した集配システムも利用しながら、安定した地方からの輸出体制を構築し、定期便化を目指す」としている。

今回の実証実験は、農林水産省の補助事業を活用したものだ。コロナ禍での農林水産物の輸出促進のため、地方の港湾や空港を拠点にした安定的な流通網を構築することを目的としている。

ヤマトと同様に、事業に応募した一般財団法人の北海道食品開発流通地興(函館市)は千歳空港からの輸送に必要な冷蔵施設の整備や梱包(こんぽう)材の開発、効率的な輸出の手続き体制の構築を実証する。北海道からはハムやソーセージなどの加工食品を香港に向けて輸出している。週1便の定期便が休止となったことで、同社の担当者は「輸送コストが倍近くになった」とこぼす。

地方空港の課題は取扱量の確保だ。1つの地域単独では、取扱量に限界があり、季節性の高い農林水産物は安定的な流通は難しい。地方からの直行便で輸送時間が短縮できれば、生乳なども輸出できるようになり、取扱品目も増える。同社は「(輸出に有利な)円安の今こそ、体制を整えるチャンス」と、東北地方の生産者などとも連携し、千歳空港の利用拡大を目指す。

ディスカウント店「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)グループも同事業に応募した企業の一つだ。同社は7月、香港で同社初のコメ専門店「安田精米」を開業した。精米を販売するほか、寿司(すし)やおにぎりなどの日本食も提供している。

同社は8月に発表した中長期経営計画で農水産品の輸出額を60億円から令和7年度までに100億円に拡大する目標を掲げた。北海道や東北、九州の空港を活用する方針だ。地方空港にとって、旅客機を使った空輸は旅行客の減少による収益の補(ほ)塡(てん)にもなる。コロナ禍で休止している定期便の早期再開にもつながるだけに地方の期待も高まっている。(高木克聡)

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September 07, 2022 at 11:01AM
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