JR東日本が東北新幹線で1度に約600箱の荷物を運ぶ「多量輸送トライアル」を実施した。鉄道各社が新型コロナウイルス禍を受けて取り組んできた荷物輸送だが、旅客需要が回復する中で存在感が薄まっている。トラックドライバー不足の深刻化が懸念される「2024年問題」への対応策として注目が集まる一方で、収益的に事業として成立するのか正念場を迎えている。
6月16日、東北新幹線に新青森発大宮行きの臨時列車「はやぶさ72号」が運行された。異例なのは大宮(さいたま市)という行き先だけではない。最上級座席のグランクラスやグリーン車の営業はなく、指定席は1~5号車だけ。6~8号車の客室には人間ではなく荷物が“乗車”していた。その数、なんと約600箱。中身は鮮魚、生花からスイーツ、電子部品までと多彩だった。
各座席の間に荷物が満載された
実はこの列車、JR東日本が2021年10月から「はこビュン」の名称で展開している列車荷物輸送サービスのために設定された。はこビュンでは通常、空きスペースとなっている車内販売準備室に最大40箱を積み込んでいる。あくまでも旅客輸送が主で、荷物輸送は従である。しかし今回のはやぶさ72号に限っては、荷物輸送の列車に乗客も同乗しているといった様相だった。しかも時刻表に書かれた始発は新青森駅だが、荷物輸送はさらに2キロメートルほど北の車両基地「盛岡新幹線車両センター青森派出所」からスタートしていたのだ。
JR東が異例となる列車を仕立てた背景には、荷物輸送が直面している大きな壁がある。
旅客需要復活で薄まる存在感
旅客列車で荷物を運ぶ取り組みは、コロナ禍で本格化した。速達性に強みを持つ新幹線だけでなく、在来線特急や通勤・通学電車でもトライアルが相次いだ。コロナ禍で人の動きが制限される中、活発に動いていた荷物の需要を取り込もうという狙いからだ。鉄道会社の多角化といえば商業施設、ホテルなど。どれも人の移動を前提としたもので、コロナ禍では大打撃を受けた。人流に頼らない新たなビジネスとして脚光を浴びたのだ。(参考記事「ガラ空きで走る新幹線 荷物輸送で穴を埋められるか」)
ところが、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、移動の制限がなくなった今、存在感が急速に薄まっている。例えば九州新幹線を使って荷物を輸送するJR九州の「はやっ!便」。当初は博多駅のみどりの窓口の一等地に、荷物カウンターが設けられていた。しかし今では切符を買い求める長い列が復活し、荷物カウンターは隅に追いやられている。
実は当初から「荷物輸送は手間ばかりかかって、大した収入にならない」(あるJRの首脳)といった冷めた見方があった。
国鉄の分割民営化では、貨物輸送はJR貨物が一手に引き受け、旅客輸送に特化したJR東など旅客6社と明確なすみ分けが図られた。そのため、駅は旅客優先で、荷物を効率的に運べる構造になっていない。車両も同様で、荷物を積み込むスペースが限られる上、搬入・搬出は乗降用の狭いドアを使い、人海戦術に頼るしかない。何より、旅客6社は荷主との付き合いがなく、需要の開拓は難しい。結果的に、沿線の名産品を列車で運んで駅ナカで売るといった取り組みにとどまってきた。地域活性化としては及第点だが、それ単体で収益を上げるほどの事業規模には育てられていない。
そんな中で、規模拡大に向けてアクセルを踏んでいるのがJR東だ。傘下の物流会社・ジェイアール東日本物流(東京・墨田)と連携して、駅から先の物流センターや店舗までの輸送もトータルで提供。市中のスーパーなどグループ外の荷主も積極的に開拓している。ただ、前述のように1列車で運べる量は40箱程度に限られるため、「新鮮な商品が手に入るのは魅力的だが、もっと多くの量を運べないかという声があった」(JR東日本マーケティング本部の堤口貴子マネージャー)。
JR東日本マーケティング本部で事業推進ユニット(列車荷物輸送・SCM)マネージャーを務める堤口貴子氏
しかし、大量輸送に対応するためには、積み込みと荷下ろしに十分な時間を割ける場所が必要になる。白羽の矢を立てたのが、車両が長時間停車している車両基地だった。
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