2024年問題を皮切りに変革期を迎えている物流業界。2018年に日野自動車によって設立されたNEXTロジスティクスジャパンは山積している物流課題・問題に対し、徹底した「効率化」とその「仕組」作りで勝負を挑もうとしている物流会社だ。意欲的な同社の取り組みを紹介していこう。
文・写真/フルロード編集部、図/NEXTロジスティクスジャパン
NEXTロジスティクスジャパンとは?
ご存知の通り、昨今の物流業界は「ドライバー不足」「2024年問題」あるいは環境面では「カーボンニュートラル」への対応などさまざまな課題が山積する。
日本の物流は、貨物輸送量を重量ベースでみると91.6%をトラック輸送が担っており、こうした課題はダイレクトに荷物が運べなくなる問題へとつながっていく。
政府の試算によると物流の働き方改革が施行される2024年4月には約4億トン(14.2%)、2030年には約9.4億トン(34.1%)の輸送力が不足するとされ、消費者にモノが届かなくなるだけではなく、物流の大きなウエイトを占める企業間の輸送にも影響を与え、日本の経済活動を脅かす可能性も出てくる。
NEXTロジスティクスジャパン(以下「NLJ」)は、こうした課題に対し、自動車のテクノロジーを活用して解決していこうと日野自動車の子会社として2018年に設立された物流会社である。
自動車メーカーの物流会社は、自社の車両や自動車部品の陸送・輸送を担う系列企業が多い中、NLJが扱うのは、食料・飲料、日用品雑貨、工業製品などの一般貨物で、問題が直面するであろう「現場」に軸足を置き、課題解決に向けた取り組みを行なっている。
その取り組みは、無人荷役(自動運転フォークリフト/自立走行搬送ロボット)や、大型FCトラックなどの実証実験に参画するいっぽう、待ってはくれない物流課題に対し、現在「フェーズ1」として進めているのが、連結全長25mのダブル連結トラックを活用した異業種間の荷物の「混載」という試みだ。
徹底的な効率化を追求!! 42の荷主・物流会社を巻き込んだ物流改革
トラック輸送は、出発時はフル積載であっても帰り荷は大きく積載率を落とすような場合が多く、NLJでは「日本のトラックの6割が空気を運んでいる」と言い表している。
実際に最新型大型トラックのICT機器で得られた重量データから積載率を出すと、概ね平均で40%を切っているそうだ。
そしてこの積載率の低さが、トラック輸送における生産性の低さでもあり、結果的に全産業比で2割安いといわれるドライバーの賃金へとつながり、働き先として敬遠される要因の一つとなっている。
NLJではこうした生産性を上げるため、徹底した「効率化」とその「仕組み」作りを行なっている。その柱となるのは積載効率を高める「混載」と、省人化に貢献する「大量輸送」、クルマや人材を効率よく使うための「物流のシェアリング」だ。
大量輸送に用いられるのは、2021年8月の規制緩和によって実現した全高4.1m(従来は3.8m以下)のドーリ式ダブル連結トラックで、同車は国内最大クラスの大型トラック2.5台分となる150㎥の荷室容積を誇る。
同社のダブル連結トラックは冷凍トレーラ含め現在9セットあり、関東(神奈川・相模原)〜関西(兵庫・西宮)間の幹線輸送で、物流会社の垣根を超えたシェアリング形式の運用が行なわれている。
このシェアリングは、NLJのダブル連結トラックをリース形式でパートナー企業へ提供し、別会社同士である関東のドライバー・関西のドライバーとそれぞれの会社のトラックを中継地点(浜松市や豊田市)で切り替え、両ドライバーが相手方のトラックを運転して出発したセンターへ戻っていくという試みである。
こうしたリレー輸送やスイッチ輸送と呼ばれる中継輸送自体は真新しい試みではないが、そこに運送会社の垣根を超えたクルマや人材のシェアを加えることで、トラック・ドライバーの効率を最大化しようというのがNLJの狙いだ。
いっぽう、ダブル連結トラックの荷室もシェアすることで、積載率を高めようとする試みも行なわれている。すなわち、さまざまな荷主とタッグを組んで進める混載輸送である。
次ページは : 混載輸送の仕組み作りと量子コンピュータを使った自動割り付け・積み付けシステム
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