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中国では新型コロナウイルス対策として、個人情報を収集する監視システムが利用されている。しかし中国全土のデータを統合するのは容易ではなく、民間企業が担う役割が大きい。監視技術が感染の拡大防止に成果を上げれば、個人情報収集をめぐるテック大手への見方が変わるかもしれない。
QRコードを掲げて飛ぶドローン(写真=新華社/アフロ)
新型コロナウイルス「COVID-19」の感染が中国で拡大し始め、中国政府が国内の交通を遮断し始めた時、作家の沈大成氏は友人らから「予言者」と呼ばれた。同氏が2018年に発表した短編小説「盒人小姐(Miss Box Man)」は、ウイルス感染の恐怖に覆われた世界を舞台にした物語だった。
小説の中で、裕福な者たちは病原体から身を守る箱の中に体を入れて暮らしている。そうでない者は、強制的に繰り返し血液検査を受けさせられ、噴霧器で消毒液をかけられながら生きている。ウイルス感染が見つかった者は捕らえられ、その場で殺される者もいる。街中にひそかにセンサーが設置され、感染者をあぶり出そうとしている。
現実の中国も、感染が拡大するのに伴い、この小説を思わせる悲惨な状況にある。違いは箱と殺害が存在しないことだけだ。一例として、中国東部の都市、杭州で夫と息子と暮らす孫さんの様子を見てみよう。
市当局が運用する健康チェックアプリ「杭州健康コード」の自己診断フォームに「鼻水が出る」と入力したところ、感染の可能性ありとラベル付けされてしまった。孫さんは最近、中国北西部の生まれ故郷に帰省したばかりで、そこで湖北省から来た人と接触していた。湖北省は感染が始まった中心地だ。中国では昨年12月以降6万5000人以上が感染し、約2600人が死亡している。
孫さんのアプリに表示されるQRコードは赤い色をしている。これは外出を14日間自粛すべきことを示す。QRコードが黄色の場合、リスクはもう少し低いと見なされ、外出自粛は7日間となる。杭州の街中を自由に歩き回るには、検問所でスマートフォンを取り出し、緑色のQRコードを示さなければならない。
上の写真は、深圳で実施されている別の形の監視の様子だ。自動車の運転者は、ドローンにつるされたQRコードを読み取って登録をしなければ、市域に入ることができない。
孫さんのアプリは、自分がありふれた慢性鼻炎であることを説明する機会を与えてくれない。地元政府に申し立てをし、近隣の役所にいる担当者の訪問を受けてようやく、コードの色が赤から緑に変更され、杭州の街中を歩き回れるようになった。
日経ビジネス2020年3月9日号 96~97ページより
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March 04, 2020 at 10:08PM
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「中国政府の監視機構 vs 新型コロナ」の先に待つもの - 日経ビジネス電子版
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