『航空のゆくえ─自由化の先にあるもの』=PHOTO: Masahiro TSUKAHARA/Aviation Wire
成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)の嘱託職員、柴田伊冊さんが航空の自由化の歴史と展望を考察した『航空のゆくえ─自由化の先にあるもの』(ちくま新書、税別880円)を出版した。国際公法が専門で千葉大学の学術博士号も持つ柴田さんに、著作の狙いなどにを聞いた。
── この本はいつ頃、企画されたのでしょうか。
柴田:実は2000年頃、千葉大で研究活動をしていた時にまとめた論文が基になっています。それを一般向けにわかりやすくまとめたのがこの本です。NAAでの仕事は、ランプコントロールや防災などでしたので、そのシフト勤務の合間に千葉大の大学院に通って研究活動をしておりました。
── 本の内容を簡単に教えてください。
柴田:基本的に定期航空の歴史から始まりますが、第二次大戦後、民間航空が国の支配体制から脱して自由を獲得して発展する過程を、時間とともに地域別にもまとめたものです。前半は国家間の航空協定の変遷。後半は地域別の自由化の進展について見ています。
── この分野に関心をもたれたきっかけは何でしょうか。
柴田:もともと法学部出身で、1981年にNAA(当時は新東京国際空港公団)に入社しましたが、1983年に大韓航空機撃墜事件が発生しました。この後、二度とこうした事件がないようにと各国の管制機関などが話し合いを始め、ICAO(国際民間航空機関)などでも管制通信などの整備が行われ、シカゴ条約(国際民間航空条約)にも盛り込まれました。その時はまだ、成田空港でランプコントールの仕事をしていましたが、交渉に参加したパイロットなどから話を聞く機会がありました。国際法というのは、基本、強制力も罰則もありません。しかし、そのとき「国際社会では必要が秩序を作る」ということを感じて、それをより深く勉強してみようと思うようになりました。
── 本では米国、欧州、そして日本の「航空の自由化」について詳しく解説していますね。
『航空のゆくえ─自由化の先にあるもの』の著者、柴田伊冊さん=PHOTO: Masahiro TSUKAHARA/Aviation Wire
柴田:「航空の自由化」と一口にいっても、地域によってイメージに違いがあります。例えば米国は1980年代にオープンスカイポリシーで、多くの新規参入がありましたが、他方で多くの航空会社が倒産しました。日本の場合、日本航空(JAL/JL、9201)やスカイマーク(SKY/BC)が経営破綻しても、それをそのままにする、という風土はありません。日本では混乱を避けようとする社会的な原理が働くためです。また、欧州ではEU(欧州連合)統合という背景があり、まずユーロコントロールという形で管制機関を統合してから、段階を踏んで自由化を進めてきました。本ではその差について解説しています。
── その「自由化」の感覚の違いは、やがて一つになっていくのでしょうか。
柴田:グローバル化が進んでいく過程で、やはり「自由化」の感覚差は調整されていくと思います。また、新たなプレイヤーも増えていきます。それは中国やアジア、そして中東の国々などです。もちろん、それらの国にも違う「自由化」がありますが、それもやがて集約されていくような気がします。
── 現在、新型コロナウイルスの感染拡大で航空界は大変なことになっていますが、コロナ後の航空界はどうなるのでしょうか。
柴田:航空の進展は“利益”です。金銭的な利益だけではなく、文化的、社会的利益が多くの人にもたらされると思っています。その共通の“利益”で、人々が国境を越えてつながっていくと感じます。歴史的にみて、移動によって通商が成り立ってきたように、将来コロナウイルスが終息した後でも、その方向性は変わらないと思います。
【著者略歴】
しばた・いさく 1957年、新潟県長岡市生まれ。明治大学大学院法学研究科修了(修士)。千葉大学大学院社会文化科学研究科修了(学術博士)。専門は国際公法。日本空法学会会員。
関連リンク
航空のゆくえ ─自由化の先にあるもの (筑摩書房)
書籍
・Pen+『完全保存版 エアライン最新案内。』
・「世界航空機年鑑 2019〜2020年」
・ルーク・オザワ『JETLINER VI(EVOLUTION)』
・イカロスMOOK『エアライン GUIDE BOOK 改訂新版)』
・イカロスMOOK『政府専用機 B-747』
・井上泰日子『最新|航空事業論[第3版]エアライン・ビジネスの未来像』
・イカロスMOOK『ANA&JAL 日本のエアラインCAになる本』
・丹治隆『どこに向かう日本の翼―LCCが救世主となるのか―』
・大宅邦子『選んだ道が一番いい道』
雑誌
・「偵察航空隊任務終了─“見敵必撮”の60年」航空ファン 20年6月号
・「航空自衛隊2020 現用機&兵装カタログ」航空情報 20年6月号
・「聖火特別輸送機”TOKYO 2020号”」月刊エアライン 20年5月号
・「THE ANA」月刊エアステージ 20年5月号
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April 19, 2020 at 04:50AM
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