（10日、東京東西決戦 東海大菅生3―2帝京）
九回裏。2点差を追いつかれ、なお無死満塁。二塁後方に打球が上がった。中堅手の加田拓哉主将（3年）が懸命に前進したが、白球は飛びついたグラブの50センチ先に落ちた。サヨナラ負けが決まった。「何も考えられなかった」。しばらく、立ち上がれなかった。
大阪府出身。帝京のユニホームに憧れて上京し、寮生活を続けている。2年生だった昨夏もベンチ入りしたが、新チームでレギュラーから外された。「自分の態度が悪かったからです」。前田三夫監督が据えた、お灸（きゅう）だった。
8月末のレギュラーの長野遠征に呼ばれた。みな試合用のユニホームで戦うが、加田は上下とも白い練習着での参加だった。監督からベンチ裏に呼ばれた。「試合に出たいか」。はいと答えると、「だったら主将をやれ」と命じられた。
甲子園が消えたとき、チームは空中分解しそうだった。加田は「まだ野球を続けるのか、という雰囲気だった」と語る。そんなチームを「東京一になろう」と鼓舞し、引っ張ってきた。
「主将には向いていない」と自己評価する。だが前田監督は「彼しかいなかった。今年は加田のチームだった」と語る。
大阪を出て3年。「短かった」と振り返る。東京一の夢はかなわなかったが、「精いっぱいやったから」。涙はなかった。泣き崩れる仲間の肩をたたき、表彰式で最後まで相手に拍手を送り、憧れ続けたストライプのユニホームを脱いだ。=ダイワハウス八王子（抜井規泰）
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August 11, 2020 at 12:22PM
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打球はグラブの50cm先に 帝京、東京一まであと一歩 - 朝日新聞デジタル
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