本書『営業はいらない』(SB新書)を最初に本屋で見たのは、まだコロナが話題になり始めた今年(2020年)2月だった。最近ふたたび見かけたら、帯に「コロナで加速する脱・訪問営業」とあり、7刷と売れている。客先に行けなくなった営業マンが危機感から買い求めているのかもしれない、と思った。
著者は投資会社の社長
著者の三戸政和さんは、日本創生投資代表取締役社長。同志社大学卒業後、ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。その後、兵庫県議会議員となったが、2014年地元の加古川市長選に出馬するも落選。2016年、日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業承継・事業再生などに関するバイアウト投資を行っている。2018年に出した『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)は累計16万部を超えるベストセラーになった。評者も「そんないい話があるのか」と立ち読みしたのを覚えている。
「営業」とは何か?
本書でいう「営業」とは、「見込み客を集め、情報提供しながら見込み客の購買意欲を高める。その中から購買可能性が高い見込み客を選別し、個別にアプローチ。打ち合わせを重ねながら、ニーズをヒアリングし、提案の作成、価格交渉、そしてクロージングまでもっていく」プロセスのことだ。
「営業はいらない」というフレーズは刺激的だ。営業こそ命、営業こそ会社の華と考えている営業マンは多いだろう。しかし今後、営業がAIなどテクノロジーに代替されるというレベルに止まらず、営業活動自体が不要になっていく戦略を確立しようとしている最先端企業があることを紹介している。
このような考えを講談社のWeb媒体「現代ビジネス」で発信すると、「営業はなくならない」という反論があったという。顧客のニーズを把握し、提案する営業はなくならない、トラブル処理や顧客の感情処理など、ホスピタリティが必要な営業はなくならない、ほしいものがわからないという顧客への営業はなくならない、などの論点が挙げられた。
これらの反論を以下の構成で、ことごとく反駁し、営業マン受難の時代に営業マンに新たな指針を示している。
第1章 サラリーマンの不幸の根底には「営業」がある 第2章 世界はもう「営業不要」で成功しはじめている 第3章 テクノロジーが営業を殺す 第4章 営業マンはどこに向かうのか 第5章 営業マンを自由にする「小商い」のすすめ
ホームページ上で電気自動車を売るテスラ
三戸さんは、アメリカで電気自動車を製造・販売しているテスラ・モーターズなどの例を挙げている。テスラはディーラーを持たない直販体制を採っている。さらに直営販売店さえも一部を除いて廃止し、今後ホームページ上でのみ買える形にすると発表している。中間マージンをカットし、販売価格を下げるためだ。「永遠に進化し続けるソフトウェアと他の追随を許さないビッグデータの蓄積」というテスラの魅力があるため、営業のみならず広告すら不要な世界になっているというのだ。
B to Bでも営業マンは不要になる
日本でもB to B(企業対企業)分野の受注を中心とした営業マンの仕事はテクノロジーへの代替が始まったという。間接材では「モノタロウ」のサイトが卸業者の営業マンの代替になり、直接材でも「CADDi(キャディ)」というプラットフォームが特注の板金加工品の分野で成長しているという。3次元設計図をアップロードするだけで、価格と納期の見積もりは7秒でできてしまう。100社を超える加工会社と提携し、マッチングを行っているそうだ。
MRもテクノロジーに置き換わる
製薬会社の営業マン、いわゆるMR(医薬情報担当者)の世界でも、インターネットを通じた購買が進んでいる。「MR君」というWebサービスは、医師にも製薬会社にも欠かせない存在になっているという。
セールステックツールとは?
営業活動に利用されるテクノロジーは「セールステック」と呼ばれるが、アメリカでは以下のツールとなり、営業の各プロセスが自動化されている。
MA マーケティング業務の一部を自動化するツール SFA 営業活動の一部を自動化するツール CRM カスタマーサポートやアフターサポート(既存客にリピーターになってもらうための業務)の一部を自動化するツール
これらを活用すると、「すべての商談をAIが把握しているため、報告業務からそれを受けての進め方のアドバイスまで、トップ営業マンのやり方をベースにシステム上でできてしまう」のだ。営業の管理職もいらなくなる。
営業マンはどう生き残るべきか?
そんな時代になると、営業マンはどう生き残るべきなのだろうか?
1 セールステックを使いこなし自らのセールスの成果を底上げする 2 セールステックを使いこなすセールスチームの指揮官になる 3 営業職から離れ自ら戦略を立てられる新たな地位に就く
三戸さんは、3番目の道、営業マンこそ経営者をめざせ、と説いている。そこで勧めるのは、「ブルー・オーシャン戦略」ならぬ「ブルー・ポンド戦略」だ。広大な「海」ではなく、小さいが大きな価値のある「池」での成功をめざせ、というのだ。
具体的には、「規模の小さい市場で独占を達成する」「身近な範囲で高い顧客ロイヤルティを生み出す」ことがミッションとなる。
サラリーマンは「なんでもいいから自分が仕入れた商品を自分の手で売ってみなさい」と勧めている。さらに冒頭に紹介した『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』に話は戻る。地方での小商いにこそ、勝機はあるというのだ。
独立して経営者になるかどうかは別にしても、営業マンにとって厳しい時代が到来するのは間違いないようだ。
アメリカでは商品とともに営業手法も進化しているようだが、日本では魅力的な商品がない企業ほど、営業に依存している面もないだろうか? つまり「ブラック企業」だ。本書の論点とはずれてしまうが、「営業はいらない」時代の営業こそ、大変になるかもしれない、と思った。
BOOKウォッチでは、『巣ごもり消費マーケティング ~「家から出ない人」に買ってもらう100の販促ワザ』(技術評論社)などを紹介済みだ。
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September 02, 2020 at 05:21AM
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コロナで脱・訪問営業が進んだ先には何がある? 『営業はいらない』 | J-CAST BOOKウォッチ - BOOKウォッチ
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