Tuesday, October 27, 2020

実質タダ?【GoToホテル】非常識な裏技への違和感(瀧澤信秋) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

活況呈するGoToトラベル

一時は空気を運んでいたような新幹線や飛行機へも、緩徐にではあるが人が戻りつつあり国内旅行に人の動きが出てきている。ご存じ「GoToトラベル」をはじめとした観光産業救済施策キャンペーンの効果によるところが大きい。

改めての制度説明は割愛するが、当初メディアでは制度にまつわる不備やトラブルが大きく指摘され、“GoToトラブル”などと揶揄されていた。こうした時に不埒な行動をする人々が跳梁跋扈するのは世の常であるが、中には旅の需要喚起という本来の意義とは異なる、GoTo錬金術を指南するような情報まで流布された。

そうしたトラブルの度に都度ルールは改変されてきたが、ゴールポストはいまだは動き続けている。とはいえ事業者も(不備な制度という点も含め)徐々に“慣れてきている感”もあるだろうが、いずれにせよここ数ヶ月の現場の労苦、創意工夫には頭が下がる思いである。

メディアではGoToトラブルにまつわる批判から一転、キャンペーンがスタートするとお得感が焦点となり、中には複数のキャンペーンや手段を組み合わせることにより【通常○○円がGoToで○○円!】というセンセーショナルな情報も拡散され続け人々は釘付けとなった。

事実、一部の宿泊施設へは予約が殺到しており、一時の閑古鳥が嘘のように賑わいを取り戻しているホテルも見られる。施設側からすると予約取り込みの絶好の機会であり、宿泊予約サイトをみるとお得感を前面に打ち出した魅力的な宿泊プランが目白押しだ。時に様々なプランや裏技を駆使して実質0円もしくはそれに近いというような情報も話題を呼んだ。

GoToの盛り上がりに呼応し、筆者もテレビやラジオなどのメディアでホテルガイド的な露出の機会を多くいただいたが、やっぱりGoToですか!というスタッフとの打ち合わせの中では、あくまでも施設の魅力を伝えることに重きを置き、GoToありきのお得感を全面に打ち出すことはやめようと一貫して伝えてきた。

ついついお得感や具体的な金額などに注目しがちだが、まず大切なのは「旅立ってあの宿で癒やされたい」という直感だ。宿ありきという点でいうと、GoToトラベルの仕組みからその割引率に着目すると、高級な宿泊施設、高額なプランほどお得感は高いことは広く認識されてきたが、普段なら手が届かないホテルや旅館へもキャンペーンを機に出向こうという動きが強くなった。

かくいう筆者も、緊急事態宣言下での取材自粛からスロースタートながらホテル訪問を再開させる中で、宿泊予約サイトに表示されるGoToトラベル価格には一喜一憂する日々であり、事実、これまでならとても手が出ないような高級ホテルへ出向く契機にもなっている。

一方で、ビジネスホテルの料金には高級ホテルとは別の意味で目を疑いたくなるようなケースが散見される。これについても取材をすすめており別の機会に纏めたいと思う。

 

時に朝三暮四も頭をよぎる

これまでならとても手が出ないような、と前述したが、これはインバウンド活況下で高騰していた料金に比してのこと。果たしてこのコロナ禍のご時世、GoToがなかったらどのくらいの料金設定だったのかは個人的に気になるところだ。

筆者は仕事柄各地にリピートするホテルがあり、過去の経験から閑散期には○○円・繁忙期には○○円と料金設定を固定して認識している施設・客室がいくつかある。これまで30回以上はリピートしてきたとあるホテルの某客室は超繁忙期を除いておおよそ1万円の設定だ。

ところが10月はじめの平日に予約しようすると14000円になっていた。GoTo利用というアイコンをクリックすると割引後の実質的な支払い額が表示されおおよそ1万円となった。一見、確かに安くなりお得感も高く見えるが、筆者にとってはいつもと変わらないなぁという印象だった。

利用者そして事業者からも怒り噴出!実は予約サイトの方が安かった!?【どうみん割】で割食う道民

出典:Yahoo!ニュース(個人)

便乗値上げとは断定できないが、GoToで割り引かれようが何をされようが、筆者の中でこの客室は以前から断固10000円である。また、到着していつもと違ったのはフロントで2000円分の地域共通クーポンを受領したことと、ルームサービスを提供していないホテルなのに2000円前後のルーサービスメニューがフロントカウンターに目立つように並べられていたことだ。

ダイナミックプライシングという名の下でのホテル料金設定手法は、一般消費者が理解するのには大変複雑であるが、果たしてGoTo割引前で掲示される表示価格と割引後で掲示される料金は何を意味しているのか・・・朝三暮四というワードも頭をよぎる。

せっかくのキャンペーンの盛り上がりに水を差すような無粋なことを書いたが、無論消費者心理にとっては現に割引を受けたことの事実とお得感は肝要であるし、こうしたキャンペーンでお得感をゲットするテクニック的な楽しみを感じる方もいるだろう。

事実過去に類を見にいような低額設定となっているホテルや旅館は多く、そもそもGoToがなければ旅行ムードが盛り上っていなかっただろうことは推測に難くないが、筆者がGoTo下で体験したひとつの事例として汲み取って頂ければと思う。

 

目に見えないことに支払う感覚

筆者の話が続き恐縮であるが、ホテル評論をスタートしてから利用者目線(時に業界と利用者の橋渡し的目線)とコスパを基軸とし、一貫して“いかに安く悦楽を得られるか”という点を重視してきた。ただし、それも自由な競争という一定のルールがあるから成立する視座だ。

お金が注ぎ込まれたハードを利用する時にはより多くのお金が必要ということも身をもって体験してきたし、ハードは豪華でも、適当なサービス、手を抜いたサービスを続けたホテルが安い料金設定になっていく姿も見てきた。

目に見えるモノに支払うお金はわかりやすい。モノを手に入れる対価として何らかの価値を認めて支払う。一方、ホテルの現場を取材すればするほどに、その支払う料金にの対価には、ホテリエが長年かけて積み重ねてきた職人技的な技術や経験が大きく含まれていることを痛感する。ホテルはゲストが築いていく側面があり、いいゲストが集うホテルは洗練されていくが、ホテルに限らず想像力豊かということもいいゲストの条件のひとつだろう。

仮に実質0円のGoToであっても「この宿泊、本当なら自分はいくら支払うだろうか?」-こんなキャンペーンだからこそ、目に見えないホテルサービスへの対価へ支払う感覚、意義を時に思い描いてみると旅の価値や経験値がさらにアップするかもしれない。

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October 28, 2020 at 06:34AM
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