東京大学生産技術研究所(東大生研)のウイルス医療学寄付研究部門は、ニパウイルス感染症向けのワクチンの国際共同開発の推進と、同研究部門の部門長を務める金範埈教授が研究開発しているマイクロニードル技術を用い、ニパウイルス向けワクチンを室温で簡便に輸送・保管し、ワクチンの利便性を大幅に高める研究開発を進めている。
同研究は、東大生研内での研究開発連携が効果を上げる代表事例になる見通しだ。
致死率70%の感染症に対する有効なワクチン開発を東大生研が主導
ニパウイルス感染症は、マレーシアやバングラデシュなどのアジア地域で流行が報告されている感染症で、ブタからヒトへ感染し、ヒトに感染した場合の致死率は40~70%にも達するとされているが有効なワクチンはいまだ存在しない。。
東大生研のウイルス医療学寄付研究部門の甲斐知恵子 特任教授、同米田美佐子 特任教授、同佐藤宏樹 特任准教授、同藤幸知子 特任准教授の研究チームは、以前よりニパウイルスワクチンの実用化研究を進めてきた。
同研究チームのこうした取り組みに対し、重要感染症の予防ワクチン開発支援を目的として設立された国際研究開発費支援機関「CEPI(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)」が2019年2月、総額3100万ドルの支援を行うことを決定し、東大生研が指揮を執る形で米国スタンフォード大学、EUのワクチン開発支援機構であるEuropean Vaccine Initiative(EVI)、ワクチン製造会社の蘭Batavia Biosciences社が共同で進める国際共同研究開発プロジェクトが始まった。
同プロジェクトは、2019年から開始され、2024年までに第II相臨床試験を完了する5か年計画となっている。プロジェクトの統括は、甲斐知惠子 特任教授と米田美佐子 特任教授が率いる東大生研のウイルス医療学寄付研究部門が務める。この二人の特任教授は日本でのウイルス感染症研究やワクチン開発のけん引役を果たしてきた人物だ。
普及のカギはワクチン接種の最大の課題となる輸送・保管をいかに解決するか
ワクチンの開発と共に、検討されているのが輸送手段である。
例えば、日本国内で供給される予定である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けファイザー社製ワクチンは、-70℃という極低温での輸送・保管が必要とされているが、ワクチンの多くが低温を保ったまま運搬・保管を行う必要がある。ニパウイルス感染症ワクチンも同様に低温での運搬・保管が求められることが想定される。そのため、たとえニパウイルス感染症向けに有効なワクチンが開発されたとしても、輸送手段が整っていない国では、その輸送管理でワクチンの供給が滞る可能性が高いのだ。
そこで、同研究部門の部門長である金範埈教授が開発中のマイクロニードル技術と融合させることで、ワクチンを常温で輸送できる方法の実現に向けた研究が進められている。 “マイクロニードル”は、その先端直径が2~30μmと非常に細く、その長さは0.8mm程度と細長い形状になっている針であり、この形状と細長さこそが、「蚊が吸血のために人間の皮膚を刺した程度の接触と同様なので人間は痛みなどを感じない」と金教授は説明する。
具体的には、同研究部門が開発中のワクチンの必要量をマイクロニードルに塗布し、全体をパッケージ化する方法で、持ち運びができないかを検討中だという。この方法だと、常温で保存できる可能性が高く、それにより簡便な運搬・保管ができるようになる可能性が高い見通しだ。マイクロニードルの保管や携帯の簡便性は、アジアなどでのワクチン普及に大きく寄与するとの期待が高まっている。
実は、2020年度の東大生研の所長裁量経費によって「マイクロニードルを用いたCOVID-19の無痛・迅速診断チップの開発」として、このマイクロニードルを用いる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の迅速診断チップの研究開発も同時並行で進行中だという。
人間の皮膚のすぐ下側の血管外にあって細胞を浸している間質液(組織液)を、このマイクロニードルによって採取し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染による抗原・抗体の有無を調べるツールとしても有望視されている。
金教授は「このマイクロニードルを利用する検査では専門的な医療従事者が必要なく、自己診断ツールになる可能性が極めて高い」と利便性を強調する。
研究者プロフィール
金範埈(きむ・ぼむじゅん)
1998年 フランス国立科学研究センター(CNRS-LPMO) LPMO 博士研究員
1999年 オランダトウェンテ大学(Twente Univ.) MESA+研究所 博士研究員
2000年 東京大学生産技術研究所 准教授
2014年 東京大学生産技術研究所 教授
現在に至る
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February 26, 2021 at 10:21AM
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