Friday, August 27, 2021

カプセルを大胆リノベーション! カプセルホテルの“安心お宿”がコロナ禍で打ち出す“秘策” - ITmedia

 前回執筆した、『爆増した3万ブース超のカプセルホテル “ブーム終焉”の理由はコロナ禍だけじゃなかった』では、カプセルホテルの定義付けや宿泊業界におけるインパクトといった総論的な内容について触れた。また、コロナ禍前からの供給過多という状況から、日本社会が経験したことのない感染症と対峙する中、大打撃を受け続けたカプセルホテル業界全体についても振り返ってみた。

 今回は、筆者が数年間にわたり取材を続けてきた“カプセルホテルのトップランナー”といわれる事業者にフォーカスする。コロナ禍前から抱いていた危機感、突如襲い掛かった新型コロナウイルスの脅威と闘う現場、試行錯誤の末に行き着く斬新なアイデアなど、アフターコロナに向けても新たな境地を切り開きつつあるリアルな現場について、これまでの取材の総括も含めレポートしたい。

進化型カプセルホテルとの出会い

 レジャー施設などを運営するサンザ(東京都新宿区)が都心を中心に展開する「豪華カプセルホテル安心お宿(以下、安心お宿)」。1号店の東京・新橋を皮切りに、都内各所へ“進化型カプセルホテル”を出店してきた。

カプセルホテル 豪華カプセルホテル安心お宿(筆者撮影)

 進化型カプセルホテルとは筆者の造語であるが、旧来のカプセルホテルにはないデザインやサービスなどに気遣った施設のことだ。進化型カプセルホテルの社会的な認知を振り返っても、このブランドの存在は欠かせないだろう。

 筆者と安心お宿の出会いは、2014年に自身に課した365日365ホテルにチェックインするという個人的なミッションの遂行中、都内にあったカプセルホテル全店舗へチェックインしている時だった。それまで抱いていたカプセルホテルのイメージが根底から覆った衝撃的な体験にもなった。

 当時担当していた、写真週刊誌の“カプセルホテルガチ覆面調査ランキング”という企画で、勝手にランクインさせたこともきっかけとなり、以後長きに渡り取材を続けていく対象となった。

3.11の試練を経て

 1号店開業直後に襲った東日本大震災のときを振り返る取材は印象的だった。安心お宿にとっても手探りで開業にこぎつけた矢先に容赦なく襲った試練でもあった。帰宅困難者が大挙として押し寄せた経験から、施設のスタッフは、カプセルホテルは天災時に“社会インフラ”を担う身近でハードルの低い宿泊施設であり、スピーディーかつ弾力的にその役割を担うことが努めでもあることを渦中の現場で意識したという。

 そんな思いをスタッフ同士で共有したことは、カプセルホテルに求められる社会的な意義を問い直し、高付加価値型としての存在感をさらに高める契機にもなった。常に「“公益資本主義”は宿泊業の基本であること」を意識してきたというが、あらためてそれを認識した出来事だったという。熱烈なファンが多いことでも知られる安心お宿のスタンスを示すエピソードの一つだ。

徹底した無料サービス&オールインクルーシブ

 そもそも安心お宿は、進化型カプセルホテルの基本であるデザイン性の高さに加え、数百種類もの圧倒的な無料サービスの提供で利用者の支持を得てきた。無料サービスの一端を見てみても、アメニティー、高級マッサージチェア、漫画、雑誌、朝食にみそ汁、フリードリンクなど枚挙に暇がない。

 大浴場やサウナといったカプセルホテル定番サービスを含めても、極端にいえば無料サービスで生活できてしまうほどの多彩さだ。当初は、男性専用のカプセルホテルとして拡大してきたが、旅行スタイルの多様化や女性の働き方の変化など、女性需要の高まりも鑑み、女性専用エリアを設けた施設も増やしていった。

カプセルホテル 女子会ルームなるものまで飛び出した(筆者撮影)

 豊富な女性向けアメニティーや美顔器など、女性向け無料サービスを見ても徹底した女性目線の追求がなされていることも分かる。

 今では散見するようになったが、スマートフォンやタブレットを活用し、宿帳記入なしでチェックインをできるようにするなど、“シームレスなスマートホテル”としても業界をけん引してきた。安心お宿をはじめとした進化型の拡大により、伝統的な“安いけどチープなイメージの業態”から、高いクオリティーが担保された宿泊業態という新たなフェーズへ突入していったことが指摘できる。

カプセルホテル プライベートスペースがより確保されたタイプも流行った(筆者撮影)

 その半面、現場には「新しいスタイルのカプセルホテルとして、一定以上の料金設定を堅持した上で、顧客に支持し続けてもらうには、何をしたらよいのか」という問いが常ににあったという。自分たちのやっていることは世に受け入れられるだろうか? といったある種の“危機感”とも換言できる。

 19年の筆者に取材に対し、サンザ安心お宿事業部 部長(当時)の松田一宏氏は「率直にいって当初の想定よりも伸び率は鈍化してきている」と、危機感を吐露していた。まだインバウンド活況がセンセーショナルなニュースになっていた頃である。

 常に問い続け危機感を抱いてきたブランドゆえ、以前、本連載で詳述したコロナ禍前からの供給過多というフェーズ移行に敏感だったのは当然のことだったのだろう。

カプセルホテルならではの意識

 そんな中、容赦なく襲いかかったのが新型コロナウイルスだ。一般的なホテルステイは個室が基本。一方、カプセルホテルには個室はなく、就寝スペースにはカプセルユニットが並ぶ。施設の大部分がパブリックスペースを占める業態でもある。ゲスト同士が同じ空間にいる時間がほとんどというイメージからも、宿泊事業の中で忌避される最たる業態となった。

カプセルホテル コロナ禍でカプセルホテルは忌避される業態に(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 一方で、衛生面や感染症対策などについて取材を進めていくと、特徴的な取り組みが見られた。それは、清掃をはじめとした感染症対策、衛生面への徹底した対応が顧客獲得そのもの(業績)へリアルに直結する業態というそもそもの発想にある。コロナ禍の有無にかかわらず、除菌、消毒といった感染症対策は、安心お宿スタート時から意識して取り組んできたテーマであったことから、新型コロナウイルスへの取り組みもスムーズであった。

 日常的な定番アイテムとなったマスク、安心お宿ではコロナ禍以前からインフルエンザなどの感染症対策も鑑み、ゲストへの無料配布を行っており、スタッフも従前から着用していた。また、館内の至る所に過剰とも思えるほど消毒用アルコールやうがい薬が置かれていた。コロナ禍以前から実施されていたオリジナルサービスの提供ノウハウは、新型コロナウイルスの初期対応についても大いに生かされた。

カプセルホテル タオル等のアメニティーもアルコールなどと共にも個別配布されるように(筆者撮影)

 20年4月に発出された1回目の緊急事態宣言下には、多くの宿泊施設がクローズしたが、カプセルホテルからも当然のように明かりは消えた。宿泊施設全体の動きをみると、20年5月末を一つの区切りとして、6月1日から営業を再開するホテルや旅館が目立つ。

 その中で、カプセルホテルは依然営業休止が続いていて、安心お宿も例外ではなく営業再開への準備は進まなかった。こうした状況下における営業再開へ向けての現場を取材する機会を得たが、印象的だったのは地道に“見える化”を進めていたことだった。

 パブリックスペース、接客時、宿泊、ラウンジ、清掃などの注意点を計35項目掲示し、スタッフ全員の体温・体調・手袋マスク着用のチェック一覧表のほか、準備品や手順などを全員が共有できるようにしていた。そんな現場の対策は、感染症対策へのスタッフの意識、スキルを格段にアップさせその後の運営に大いに生かされていく。

コワーキングスペースに定住プラン“カプセルリノベーション”

 その後も度重ねて発出される緊急事態宣言。宿泊施設全体としても需要そのものが激減していったが、安心お宿が生き残りをかけたアイデアは意外にも“宿泊から離れたもの”であった。いわゆる「コワーキングスペース」としてのカプセルユニットの活用だ。

 カプセルの上下を分ける棚を外してデスクを設え、カプセル外にはテーブル席も設置。“カプセルリノベーション”とも表せるだろう。コワーキングスペースのプロジェクトは、クラウドファンディングを実施し大きな反響を呼んだ。

カプセルホテルカプセルホテル カプセルをワーキングスペースに(出所:プレスリリース)

 一般のホテルでは、アパートメントホテルや長期滞在プラン、サブスクリプションといった住まうホテルが着目され、宿泊の概念が変容している。安心お宿でも定住プランが打ち出された。「カプ住」と名付け、4万円で30日間宿泊できるプランとした。従来からオールインクルーシブが特色のブランドと前述したが、含まれるサービスが驚きだ。

カプセルホテル (出所:プレスリリース)

 ごはんサービス(午前6時〜深夜0時/お茶漬け・生たまご・みそ汁付き)、フリードリンクサービス、洗濯洗剤(洗濯乾燥機の使用には別途料金発生)、タオル、充電ケーブル、マッサージチェア、雑誌、コミックなどの利用を含んでいるのだ。

 従来の安心お宿のサービスがさらにブラッシュアップされている印象だ。前述したように、住居費、水道光熱費、食費も賄いつつ“月4万円で生活できてしまう”ことになる。極端な話ではあるが。

カプセルホテルはどこへ向かっていくのか

 宿泊業へ参入する時、カプセルホテルはハードルが低いといわれてきた。イニシャルコストの低さ、施設の条件、開業までの期間、その後のコンバージョンなども通常のホテルより秀でている。それ故に撤退のスピードも早く、コロナ禍でも見切りをつける事業者は多かった。

 一方で、底堅い需要もある業態であることは、この時期にカプセルホテルを利用してみると実感する部分だ。

 運営側がゲストに寄り添うスタンスは特徴的であり、リアルではディスタンスを保ちつつも、パブリックエリアへの滞在が基本という中にあって、個室にこもるホテルと比較して、ゲストとスタッフのその距離感は近い。コロナ禍を通して、個室を提供するホテルにはないカプセルホテルならではの文化とも言えようか。

カプセルホテル (画像提供:ゲッティイメージズ)

 収束の気配が見えないコロナ禍ではあるものの、運営者のアイデアやアプローチは、カプセルホテルが“安価で気軽な地元密着の宿泊施設”であるとの基本をあらためて教えてくれた。それは、アフターコロナにおいて最も尊ばれるカプセルホテルのアイデンティティーとなるだろう。

 未知の感染症への恐怖ばかりがクローズアップされ、ソーシャルディスタンスをはじめとした新たな生活様式を人々に植え付けている。他方、人々の心理に“囲い”を作ったのもまたコロナ禍だ。ドアがなく鍵のかからないカプセルホテルから、アフターコロナに向けたどんなニューノーマルが生まれるのか引き続き注視していきたい。

著者プロフィール

瀧澤信秋(たきざわ のぶあき/ホテル評論家 旅行作家)

一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。

日本を代表するホテル評論家として利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。評論対象は宿泊施設が提供するサービスという視座から、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館、簡易宿所、レジャー(ラブ)ホテルなど多業態に渡る。テレビやラジオ、雑誌、新聞等メディアでの存在感も際立ち、膨大な宿泊経験という徹底した現場主義からの知見にポジティブ情報ばかりではなく、課題や問題点も指摘できる日本唯一のホテル評論家としてメディアからの信頼は厚い。

著書に「365日365ホテル」(マガジンハウス)、「最強のホテル100」(イースト・プレス)、「辛口評論家、星野リゾートへ泊まってみた」(光文社新書)などがある。


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August 26, 2021 at 04:00AM
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