Thursday, October 26, 2023

鉄道でトラックごと輸送 一世を風靡した「ピギーバック輸送」は2024年問題の助っ人になれるか? - au Webポータル

「ピギーバック輸送」とは何か

ヨーロッパのピギーバック輸送。貨車にトレーラーが搭載されている(画像:ジョリエット・ジェイク)

ヨーロッパのピギーバック輸送。貨車にトレーラーが搭載されている(画像:ジョリエット・ジェイク)

 日本政府は10月6日、関係閣僚会議で「2024年問題」に対応するための「物流革新緊急パッケージ」をまとめた。

 2024年問題とは、2024年4月から運転業務等の時間外労働に年間960時間の上限が適用されるため、対策を講じない場合、

・2024年:14%
・2030年:34%

の輸送力不足が発生する可能性がある問題で、昨今多くのメディアによって報じられている。

 パッケージのなかでは、ドライバー不足のトラック輸送を船舶や鉄道にシフトさせる「モーダルシフト」の目標が掲げられている。この計画では、10年後に船舶輸送量を5000万tから1億tに、鉄道輸送量を1800万tから3600万tに倍増させるとしている。鉄道輸送量を増やすにはさまざまな方法が考えられるが、今回は過去に注目された

「ピギーバック輸送」

を再度注目したい。

 ピギーバック輸送とは、トラックやコンテナを鉄道で“直接”輸送する方法で、主に欧米で行われているが、実は日本でも以前から試みられていた。日本では国鉄末期の1986(昭和61)年11月に導入された。東京~大阪間で4tトラック2台を貨車に積んで輸送するというものだった。

人気を得た理由

ピギーバック輸送(画像:国土交通省)

ピギーバック輸送(画像:国土交通省)

 ピギーバック輸送は、JR貨物に移管された後も拡大を続け、1987(昭和62)年には東京~名古屋、東京~広島に路線を拡大し、分割民営化後の4月から6月までの3か月間で

「2400台」

を輸送した。ピギーバック輸送が人気を得た理由には、次のようなものがあった。

・深刻なドライバー不足の解消
・ドライバーの負担軽減
・交通渋滞の回避と定時運行の可能性

特に、定時到着率「98%」だったことが評価されたようだ。

 そこでJR貨物は、輸送効率の向上を目指して、ピギーバック輸送専用の新型貨車「クサ1000」を開発し、路線を拡大した。この貨車は輸送効率を向上させた。貨車は特別に開発された4tトラックを使用するように設計された。このトラックは全長6.5mに切り詰められ、容積を増やすために高い丸天井が設けられた。従来は1台の貨車に4tトラック2台を積載できたが、クサ1000では専用トラック3台を積載できるようになった。専用トラックまで開発したということは、今後の需要拡大が見込まれていたのだろう。

 日本のピギーバック輸送で特筆すべきは、日本石油(現ENEOSホールディングス)が行ったタンクローリーの輸送だ。石油は大型タンカーで臨海部の精製所に到着する。精製された石油は、日本各地の貯油所(石油タンク)に運ばれ、そこからガソリンスタンドに運ばれる。

 タンクローリーで輸送できれば、貯油所の数を減らすことができ、大幅なコスト削減が期待できる。ピギーパック輸送の成功を見た日本石油は、タンクローリー輸送の実用化に着手し、1992(平成4)年に神奈川臨海鉄道の横浜本牧駅から武蔵野線を経由して新座貨物ターミナル駅まで試験運行を開始している。

規制緩和の影響

トラック(画像:写真AC)

トラック(画像:写真AC)

 この実験運行のために、日本石油はJR貨物などと共同でタンクローリー専用貨車「クキ1000」を開発した。

 しかし、タンクローリーのピギーパック輸送は、巨額の投資にもかかわらず、わずか4年間の運行で1996(平成8)年に廃止された。この頃には、ピギーパック輸送が貨物輸送の話題に上ることはなくなっていた。短期間で需要がなくなったのだ。原因は

「トラック輸送とのコスト競争」

がなくなったことだ。

 1990年に施行された物流2法、

・貨物自動車運送事業法
・貨物運送取扱事業法

によって、トラック運送業界は規制緩和された。これにより参入障壁が下がり、新規参入が相次いだ。1990年には一般貨物自動車運送事業者は3万6485事業所だったが、2000年には5万401事業所(38%増)にまで増加した。

 さらに、物流2法によって運賃が届け出制に変更された。これにより、物流業界では激烈な値下げ競争が常態化した。日本銀行の「企業向けサービス価格指数」のうち、道路貨物運送の価格指数は

・1995年:100
・1996年:98.7
・2002年:97.1

と急速に低下した。

将来を期待されたピギーバック輸送は、規制緩和の波に敗れたのである。

再導入の価値

トラック(画像:写真AC)

トラック(画像:写真AC)

 では、現代のモーダルシフトのなか、ピギーバック輸送の再導入にどれほどの価値があるのだろうか。ドライバー不足問題を解決するためにピギーバック輸送を再導入するという提案は単純ではない。

 JR貨物が専用の貨車やトラックを開発するなど、初期投資も大きい。そのようなコストを負担する価値があるかどうかを慎重に検討する必要がある。特に貨物駅の新設など、追加投資が必要になる可能性がある。

 輸送量の問題もある。過去のピギーバック輸送を見ると、最大積載量は4tトラック3台で、10tトラック1台をわずかに上回る程度である。日本の鉄道の制約を考えると、積載量を増やすのは難しい。

 しかし、現代の技術や社会情勢、モーダルシフトの必要性などを考慮すれば、ピギーバック輸送を再考する価値はある。課題は多いかもしれないが、それを解決することで、効率的で環境に優しい輸送方法が実現できるかもしれない。

 かつて一世を風靡したピギーバック輸送は、日本の交通問題を解決する新たな解決策として期待されているのかもしれない。

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