Thursday, November 23, 2023

物流の未来を担う「コンテナ鉄道輸送」 モーダルシフトの鍵は「低床貨車」である - au Webポータル

コンテナ船の普及

コキ73形(画像:MaedaAkihiko)

コキ73形(画像:MaedaAkihiko)

 モーダルシフトの鍵となるのは、国際海上コンテナを輸送できる低床貨車(車輪が小さく、コンテナを載せる床面の位置が低い貨車)の開発である。なお、モーダルシフトとは、自動車による貨物輸送を環境負荷の少ない鉄道や船舶に転換することを指す。

 海運におけるコンテナ化は、1966年に米国のシーランド社が北米と欧州を結ぶ航路にフルコンテナ船を導入したことから始まり、世界的に普及した。翌1967年には、マトソン社が日本と米国西海岸を結ぶ航路にコンテナ船を投入。日本の船会社もこれに触発され、本格的なコンテナ輸送を開始した。

 国際海上コンテナの鉄道輸送に対する要請に応え、国鉄は速やかに開発に着手した。1968(昭和43)年には、国際海上コンテナ輸送に特化した

・コキ9100形貨車
・コサ900形貨車

をそれぞれ2両作り、試験走行を行っている。同年、41tを積載可能なコキ1000形と35tを積載可能なチキ5000形も導入され、輸送体系の強化が図られた。1977年には、国際海上コンテナ専用の直通列車が神戸港と西名古屋港間で運行を開始している。

 国際海上コンテナの鉄道輸送は早くから導入されていたが、日本での普及は遅かった。なぜなら、コンテナサイズがガラパゴス化していたためである。

 コンテナサイズは、世界各国の物流で使われることを前提に国際標準化機構(ISO)が定められている。そのなかで主として使われているのは、

・20ft
・40ft

のコンテナだ。しかし、日本国内の航路では

「物流単位が小さい」

という理由で、12ftのコンテナが広く普及していた。国鉄もこれに合わせて12ftのコンテナを主流とした(11ftのものも多く使われている)。このこともあって国際海上コンテナの鉄道輸送は拡大しなかった。

低床貨車の試み

コキ200形(画像:Alt winmaerik)

コキ200形(画像:Alt winmaerik)

 とはいえ、国鉄時代から現在のJR貨物に至るまで、一貫して国際海上コンテナの輸送量を増やそうという動きは続いている。国際的に普及している20ftや40ftのコンテナは、積み替えが不要で一貫輸送が可能なため、大きな収益が期待できるからだ。

 1987(昭和62)年、JR貨物は国際海上コンテナに対応したコキ100形貨車を導入し、2000(平成12)年にはさらに能力を高めたコキ200形を開発した。これらの貨車は、それぞれ20ftのコンテナを2個または40ftのコンテナを1個搭載できる設計となっている。ただ、これらの貨車にはいくつかの問題点が存在した。

 特によく採用される高さ40ftのハイキューブコンテナは、全高が2896mmもある。そのため、貨車に積んだ状態ではトンネルを通過することが難しい。そのため、40ftのハイキューブコンテナは現在、東京貨物ターミナル~盛岡貨物ターミナル間の輸送のみとなっている。

 この制約を克服するため、2016年に革新的な低床貨車コキ73形が開発された。この新型貨車は、車輪を小さくすることで低床化を図ったもので、モーダルシフトに大きく貢献する可能性があるとされた。

 しかし、その特殊な構造から、車両コストやメンテナンスコストが高いため普及しておらず、現在生産されているのは4両のみ。JR貨物の2023年度事業計画では、コストの問題から増備は見送られている。

 国際海上コンテナの鉄道輸送に低床貨車が不可欠であることは明らかである。しかし、一定量以上の需要が見込めなければ、赤字を垂れ流すことに陥りかねない。国際海上コンテナの鉄道輸送拡大は国鉄時代から一貫しているが、依然としてコスト高がネックとなっているのだ。

港と鉄道の結節点

国鉄大阪港駅舎。駅としては廃止後の浪速駅大阪港分室時代の姿(画像:Olegushka)

国鉄大阪港駅舎。駅としては廃止後の浪速駅大阪港分室時代の姿(画像:Olegushka)

 今後、低床貨車が普及し、国際海上コンテナの鉄道輸送が本格化するためには何が必要だろうか。まずは、高コストを克服するための需要拡大であることだ。そのためには、鉄道とコンテナ船との間の貨物の移動を円滑にするインフラの整備が不可欠である。

・東京
・横浜
・清水
・名古屋
・四日市
・大阪
・神戸
・博多
・北九州

といった主要港に近い貨物駅は、いずれも港から半径5km以内という位置にある。しかし、それでは不十分である。施設はコンテナ埠頭(ふとう)のもっと近くにある必要がある。

 例えば、近年ハブ港としての地位を確立した釜山港(釜山新港)では、コンテナヤードに隣接して鉄道引き込み線が敷設されている。ほかにもドイツのハンブルク港やジブチのドラレ港など、世界のハブ港のコンテナターミナルは当たり前のように鉄道で直結している。

 これに対し、日本は同等の設備を持つ貨物駅の整備が遅れている。首都圏の物流を担う東京貨物ターミナルは大井コンテナ埠頭と隣接しているが、鉄道とコンテナ船との貨物の移動がスムーズにできるような配置にはなっていない。

 これは筆者(大居候、フリーライター)の私見だが、かつての

・大阪港駅(1986年廃止)
・神戸港駅(2003年廃止)

の廃止は、今となっては失敗だったのかもしれない。

国家政策としての位置づけ

国会議事堂(画像:写真AC)

国会議事堂(画像:写真AC)

 国際海上コンテナの鉄道輸送は、将来の物流の鍵を握っている。その大きな可能性を実現するためには、鉄道輸送と海上輸送の連結性を高める大規模なインフラ整備が不可欠である。

 このような巨大プロジェクトは、JR貨物のような民間企業だけで実現できるものではない。港湾施設の再整備は今こそ、モーダルシフト推進の文脈で重要な国家政策課題として位置づけられるべきである。

 国、自治体、民間が連携し、国家戦略として取り組めば、日本の物流を支える鉄道輸送の新たな地平が開ける。この取り組みは、経済性だけでなく環境にも配慮した持続可能な物流システムへの転換を実現する第一歩となるはずだ。

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November 22, 2023 at 12:11PM
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