Saturday, February 17, 2024

紅海での船舶攻撃の影響を「欧米企業のトップ」たちはどう考えているのか | 中東情勢の悪化で海上輸送も混乱 - courrier.jp

スエズ運河ルートを回避せざるを得なくなっている Photo by Camille Delbos/Art In All of Us/Corbis via Getty Images

スエズ運河ルートを回避せざるを得なくなっている Photo by Camille Delbos/Art In All of Us/Corbis via Getty Images

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Text by J. Edward Moreno

貿易において、海上輸送は必要不可欠な手段だ。しかし、紅海での親イラン武装組織フーシ派による民間船舶に対する相次ぐ攻撃によって、打撃を受けはじめている企業も出てきているようだ。このまま状況が改善されなければ、世界の物流はさらなる混乱にのみ込まれ、その“ツケ”を払うのは消費者になるかもしれない。欧米企業トップの見通しを聞いた。


2023年11月以降、紅海を航行中の商船が、イランの支援を受けたイエメンの反政府武装勢力フーシ派の民兵に襲撃される事件が相次いでいる。紅海航路を利用する企業に残された選択肢は、船舶にかかる高額な保険料を払うか、アフリカ大陸を迂回するルートを選ぶかの2つしかない。そうした企業の利益率はコスト増と輸送の遅延で悪化し、最終的に価格の上昇となって消費者に跳ね返ってくるかもしれない。

紅海とスエズ運河を経由する商船に自社製品の輸送を託している企業経営者の多くは、世界の供給網にいま以上に深刻な混乱を引き起こしたコロナ禍に学んだ教訓もあり、現時点での影響は限定的だと述べている。

だが、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授のデイヴィッド・スミチ=レビは、「今後、企業は混乱に見舞われるでしょう。今日は紅海での混乱に、明日はまた別の混乱に、です」と、くぎを刺す。

世界貿易の約12%に相当する商品が紅海ルートで運ばれている。フーシ派による商船の襲撃が始まると、企業は苦渋の決断を迫られた。紅海ルートをとれば空からの攻撃リスクにさらされ、高い保険料を払うことになる。紅海ルートを避ければ遅延が生じ、そのぶんコストがかさむ。
ノルウェーの海上・航空輸送の市場分析企業「ゼネタ」によれば、2023年12月中旬以降、海上輸送料が高騰した。アジア-欧州間で3倍を超え、アジア-米国東海岸間で2倍を超えているという。

アナリストらは、消費者への影響は現時点では限定的と予想している。ゴールドマン・サックスのアナリストは、海上輸送料は製品に占める総コストのごく一部にすぎない点を指摘する。彼らの予測では、商船襲撃による混乱は、世界のインフレ率を年率でわずか10分の1ポイント押し上げる程度でしかない。

それでも、アナリストや投資家にとって懸念材料であることに変わりなく、決算発表の場でも質問が飛んだ。以下は、この問題に関するビジネスリーダーらのコメントだ。


影響を真っ先に感じるのは欧州企業


紅海は、アジアから欧州へ商品を輸出する企業にとってとりわけ重要なルートだが、現在は輸送費用が高騰し、到着までにかかる時間も延びている。また、アジア・欧州地域の製造業に悪影響をおよぼす可能性もある。

一連の混乱を受け、テスラとボルボは欧州での生産を一時停止した。自動車メーカーは、ジャストインタイム生産に依存している。必要な部品が組み立てラインに到着するのはまさに組み立ての直前であり、出荷の遅延に対処する余地はほとんど残されていない。

・ドクターマーチン(英国)

靴の製造・販売を手掛ける「ドクターマーチン」のケニー・ウィルソン最高経営責任者(CEO)は、欧州地域で大幅な遅延が見られるものの、アジアと北米向けはほとんど影響を感じていない、と述べた。とはいえ、「S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス」の調査では、1月に発生した海上輸送遅延の打撃を最も強く受けたのは英国企業だった。ウィルソンCEOは1月24日に開いた同社の決算発表でアナリストに対し、こう答えた。

「コスト面で明らかに影響はありますが、この状態がこのまま継続したら、来年はいったいどんなことになるのか。実のところ、そちらのほうが心配です」

・バング&オルフセン(デンマーク)

音響機器メーカー「バング&オルフセン」のニコライ・ウェンデルボー最高財務責任者(CFO)は1月10日の電話会見でアナリストに対し、「一部商品を航空便や鉄道便に振り替えて出荷している」と明かした。

「コストの微増と、リードタイム(受注から製造・販売までに要する時間)の若干の延長はありますが、コロナ禍のときとは比べものになりません。少なくとも現時点ではそこまで深刻ではありません」

・ロジテック(スイス)

キーボードやマウスなどのコンピュータ周辺機器総合メーカー「ロジテック」(日本法人は「ロジクール」。同名の国内企業がすでに存在しているため)のチャック・ボイントンCFOは、アジアの拠点で生産した製品出荷分について、海上輸送の代わりに航空輸送を増やす予定だという。輸送費は割高になり、利益を圧迫する可能性はあるが、在庫不足になるよりはまし、とのことだ。

ボイントンCFOは1月23日、「多少の減益となっても、私たちは顧客の満足を重視します」と応じた。

紅海

Photo by Roger Anis/Getty Images


米企業への影響は限定的


商品を米国に輸入する場合、紅海航路への依存度はそれほど高くない。それでも米国内企業と消費者が、世界的な海上輸送料高騰のあおりを受けることに変わりはない。
ただし、あらゆる業界が等しく影響を受けているわけではない。「バンク・オブ・アメリカ」のアナリストは、とくに影響を受けたのは小売部門だと分析する。ディスカウントストア「ターゲット」や「ダラー・ツリー」のような企業の場合、多くの商品の仕入れ先がアジア地域のため、主要な競合他社に比べて収益への打撃リスクが高いと指摘する。両社はまだ四半期決算を発表していないが、それ以外の消費者向け小売企業は、収益におよぼす影響について言及している。

・アマゾン(ワシントン州)

同社のブライアン・オルサフスキーCFOは、一連の襲撃事件は、同社の現四半期の収益予測に「まだ“重大な影響”を与えていない」と話す。

「私たちは今回の混乱を注視しています。顧客体験に影響が出ることがないよう、必要な場面で対策を講じていきます」

・1-800-フラワーズ(ニューヨーク州)

花や食品などのギフト商品を提供する同社のウィリアム・シェイCFOは、「今夏まで混乱が長引かない限り、業績に影響が出ることはないだろう」とコメントしている。

シェイCFOは2月1日の第1四半期決算発表でアナリストらに対し、「紅海で起きている問題がいつまで続き、それが今後の事業運営と、来年のホリデーシーズンに影響を与えるかどうかが大きな未知数」だと答えた。

・イーサン・アレン・インテリアズ(コネチカット州)

家具・インテリア調度品をデザイン・販売する同社のファルーク・カスワリCEOは、アナリストに対し「北米地域で製造をおこなっているため、今回の混乱の影響はない」と説明した。カスワリCEOは1月24日の四半期決算の電話会議で、こう語った。

「しかし、もし当社の製品のほとんどが海外からきていたら、それは問題になっていたでしょう」

© 2024 The New York Times Company

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February 18, 2024 at 04:01AM
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