Monday, April 1, 2024

全ト協、大手も中小も輸送委託は「2次下請」までに - カーゴニュース

全日本トラック協会(坂本克己会長)はこのほど、「多重下請構造のあり方検討会」の提言をとりまとめた。政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」では、輸送業務の多重下請構造の是正に向けた規制的措置の導入が盛り込まれた。これを受け提言では、輸送業務の委託について大手だけでなく中小運送事業者を含めた業界全体として2次下請までに制限すべきとし、求貨求車システム等マッチングサイトに対しても標準的な運賃を大幅に下回る低運賃の掲示を規制するよう提案。元請事業者に影響力を持つ荷主の役割にも言及した。

元請は荷主から標準的な運賃+10%の手数料収受を

全ト協では、実運送事業者における適正な運賃の確保によるドライバーの賃金水準向上の実現に向け、多重下請構造の是正に向けた方策や利用運送事業者のあり方等について検討するため、坂本会長の諮問機関として同検討会を設置した。

提言では、下請の制限について一般貨物自動車運送事業者ならびに利用運送事業者における利用運送は、自主行動計画を取りまとめた大手運送事業者だけでなく、中小運送事業者を含めたトラック業界全体として2次下請までに制限すべきとした。

元請運送事業者(一般貨物自動車運送事業者・物流子会社)は、下請を利用する場合、荷主から標準的な運賃に加えて、告示で定める利用運送手数料10%を収受するための交渉を積極的に行い、実運送事業者に適正な運賃を支払うことを求めた。

いわゆる「水屋」(利用運送専業事業者・取次事業者)には、元請運送事業者と同様に、依頼元の運送事業者等から、運賃とは別に利用運送手数料を確保し、実運送事業者に適正な運賃を支払うとともに、国交省等が適切な事業の実施をチェックする仕組みを提案した。

低運賃掲示板の利用者を是正指導対象に

求貨求車システム等マッチングサイトに対しても、標準的な運賃を大幅に下回り採算のとれない水準の運賃は、運営会社等が低運賃の取引を防ぐため、自社のサイト等に載せないよう自ら厳しく規制すべきと指摘。

実運送事業者が収受する運賃の低下を防止するため、求貨求車システム等で得た情報を他の事業者に再委託をする行為は、やむを得ない場合を除き、運営会社等が厳しく制限すべきだとした。

また、国交省等から低運賃の取引を放置する悪質な運営会社等に対しては改善の要請を行い、著しく低い運賃を掲示している掲示板の利用者(元請事業者など)を、トラックGメンによる監視や監査による是正指導等の対象とすべきと提言した。

このほか、燃料サーチャージや料金については、元請運送事業者は荷主から収受するとともに、実運送事業者にその全額を支払うよう求めた。

元請の実運送体制管理簿作成、効果検証が必要

「帰り荷=低運賃」の考え方を一掃する必要性にも触れた。標準的な運賃は、帰り荷がない場合でも採算がとれる水準となっているものの、往路および復路の貨物が同一荷主の物である場合は、往復割引の設定をするなど、荷主の理解を得るべきと主張。

また、多重下請構造是正に向けた規制的な措置について、国交省がすべての元請運送事業者に実運送体制管理簿の作成について丁寧に指導し、作成効果を検証し、必要に応じた見直しも提案した。

さらに、協会の会合等の場が利用運送専業事業者の営業活動として利用される実態があることから、各都道府県トラック協会において、利用運送専業事業者を入会させないとするルールを設けるべきとした。

多重下請構造の解消のためには、荷主から元請運送事業者に対して下請の制限をかけることに一定の効果が見込まれることから、物流効率化法の改正事項である「荷主が取り組むべき事項」として位置づけることも提言した。

なお、検討会でとりまとめた提言は坂本会長に答申し、国土交通省の各種施策に反映されるよう要請する。
(2024年4月2日号)

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