Tuesday, April 23, 2024

(「台湾リスク」と世界経済)第5回 中台間海上輸送の現状と東アジアへの影響(池上 寬) - アジア経済研究所 - Institute of Developing Economies

台湾有事が起きた場合には、おそらく中国側が航行している船舶に危害を加えないようにするために、台湾海峡の通航や海域を避けるように各国の船舶に連絡する可能性がある。一方で、各国の船社は台湾海峡における状況が悪化した時点で、台湾海峡を避けるルートに変更する可能性が高い。というのは、ロシアによるウクライナ侵攻が起きた時に、ウクライナ当局は直ちに国内の港湾を2022年2月24日に閉鎖した。これを受け、欧州系の船社であるマースク社(Maersk)、MSC社(Mediterranean Shipping Company)、CMA-CGM社などは同日からウクライナ発着の貨物引き受けを停止し、当局からの通知があるまで船舶のウクライナ寄港を中止する方針を明らかにした(『日本海事新聞』 2022年2月28日付)。また、他の主だったコンテナ船社もウクライナ発着の貨物を引き受けず、オデーサ港などウクライナの港を抜港(寄港取りやめ)し、運航を続けた(池上2022)。

ウクライナ侵攻による例からわかるように、台湾有事が起きた場合には船会社が航行ルートを変更する可能性が十分考えられる。しかし、この変更によって、輸送コスト増や輸送時間に変更が生じ、海上輸送が混乱することが予想される。とくに、コンテナ輸送は2港湾間の直接輸送ではなく、複数の港湾間を輸送する定期輸送を行っている場合が多い。そのため、定期輸送に大きな影響を与えることが予想される。航行ルートについては、台湾海峡や台湾周辺を避ける形で運航した場合でも、世界最大のコンテナ港湾である上海港、寧波舟山港など中国の港湾、韓国の釜山港は寄港が可能と思われる。しかし、台湾海峡沿いにある港湾は中国、台湾に関係なく影響を受けることが予想される。台湾海峡側にある中国の港湾のうち、アモイ港、福州港、泉州港の3港湾は世界トップ100に入るコンテナ取扱量をもつ。これらの港湾では確実その影響を受けることになろう。

また、台湾有事が起きた場合、中国国内に限定しても、航空機や車両に比べても大量に、かつ廉価に貨物を輸送できる国内向け船舶に影響を及ぼすことは間違いないであろう。これは、国際的な海上輸送の混乱だけではなく、中国の国内物流にも影響を与えることにもなり、ひいては中国の国内経済混乱の一因になることが考えられる。さらに言えば、多くの漁船も沿海で活動している。こうした漁船も影響を受けることは間違いなく、中国や台湾の漁業にも影響を与えることになる。

すでに指摘したように、中国は第1列島線と第2列島線を設定している。第1列島線に限定しても、その範囲は非常に広い海域を含んでいる。そのため、中国側が台湾有事を仕掛けた場合、中国はおそらく台湾海峡を封鎖し、国内外の船舶を航行させないことが考えられる。一方で、外国船舶は日本や韓国への運航があるため、台湾海峡を避けつつも、運航自体は続けるのではないか。また、台湾海峡付近の港湾は中台とも封鎖される可能性があるが、台湾海峡から離れている上海港などの中国側港湾は運営が続くと考えられる。結果的に、中国側の主要港湾と外国との輸送が途絶えることは考えられない。しかしながら、中国と台湾間で有事が起きた場合、中台とも海上輸送に与える影響は甚大である。そのため、中国側にとってみれば簡単に実行できないのではなかろうか。

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