Wednesday, January 3, 2024

政府「プッシュ型支援」に注力 輸送ルート、ニーズ把握が課題 - 産経ニュース

地震の影響で発生した地割れなどで、能登半島の道路は寸断状態にある=2日、石川県穴水町(桐原正道撮影)

政府が能登半島地震の被災者支援のために展開しているのが、被災自治体の要請を待たず物資を送る「プッシュ型支援」だ。平成23年の東日本大震災で物資が行き渡らなかった反省を踏まえた支援策で、すでに石川県内の支援物資集積拠点に食料などが到着し、3日から被災自治体に届き始めた。ただ、今回の震災特有の難しさもある。

「避難が長期化する可能性があり、被災者支援が極めて重要だ。すでに毛布やトイレットペーパーなどを被災地に発送しているが、避難所のニーズを把握し、適切な支援を行う」

岸田文雄首相は3日、官邸で記者団の取材にこう述べ、支援物資をプッシュ型で輸送する考えを改めて強調した。

プッシュ型支援は東日本大震災の教訓を踏まえ、翌24年6月に改正された災害対策基本法に盛り込まれた。28年4月の熊本地震で初めて本格実施され、被災者支援に大きな効果を発揮した。

政府は国の職員を被災自治体に派遣し、連絡調整態勢を強化するとともに、現地の状況把握に努める。また、首相自らが被災当初から地元首長と頻繁に連絡を取り合っており、3日も石川県の馳浩知事らとテレビ会議を行った。政府は同日に救助犬を2倍以上に増やすことを決めたが、これも地元首長から聞き取った要望が反映された形だ。

ただ、防衛省関係者は「今は自治体に何が不足しているか聞いても返ってこない。直接聞いて回って情報収集するしかない」と話す。首相は3日、避難所で活動する自衛隊員がニーズをくみ取るよう木原稔防衛相に指示した。

課題となるのが物資の輸送ルート確保だ。被災後も現地入りできるルートが複数確保された熊本地震と異なり、能登半島はルートが限られている上、道路が寸断されている。斉藤鉄夫国土交通相が3日の記者会見で「課題としては、支援物資集積拠点から先の避難所までの確実な供給にある」と述べたのはこのためだ。

「国道とか県道とか関係なく、どんどんやってくれ」

自衛隊の運用を担う防衛省統合幕僚監部の関係者は3日、道路復旧に当たる現地部隊にこう指示した。首相は被害が甚大だった輪島市へのルートに関し、「4トン車が通れるルートを確保した。今後大型車が通行可能な状況にもっていきたい」と述べる。

ただ、政府高官は「自衛隊は市街地まで行けても小さな集落までは難しい。熊本地震とは状況が違いすぎる」と指摘する。首相は海路や空路も活用する考えを強調している。自衛隊は4日にも輸送艦に搭載したエアクッション型揚陸艇「LCAC」で、輪島市に物資を陸揚げする方針だ。

(永原慎吾、小沢慶太)

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